
Linuxディストリビューションの中でも、Slackwareの開発ペースは独特だ。他の主要ディストリビューションが半年や1年ごとに新バージョンをリリースする中、Slackwareのメジャーアップデートは数年に一度だけ。メジャーアップデートリリース時にはニュースになるほどだ。この特徴的な開発スタイルには、どのような背景があるのだろうか。
長いリリースサイクルの実態
Slackware 15.0がリリースされたのは2022年2月だが、その前のバージョン14.2は2016年のリリースだった。実に6年近い間隔が空いていたことになる。さらに遡ると、13.37から14.0までは約2年、12.2から13.0までは約3年と、リリース間隔にはばらつきがある。近年はこの傾向がより顕著になっている。
この開発ペースは、Ubuntu、Fedora、openSUSEといった他のメジャーディストリビューションと比較すると異常に遅い。一般的なディストリビューションでは、定期的なリリーススケジュールが組まれ、次のバージョンがいつごろ登場するか予測できるが、Slackwareにはそうした明確な予定がない。
開発体制の特殊性
この状況の背景には、Slackwareの開発体制がある。創始者であるPatrick Volkerding氏が中心となって開発を進める小規模な体制だ。品質管理も含めて、一人の判断に大きく依存する部分が多い。
こうした体制では、大企業がバックアップする商用ディストリビューションのような迅速な開発は難しい。かわりに一貫した設計思想と品質基準を保ちやすいという利点もある。急いでリリースするよりも、納得のいく完成度に達するまで時間をかけるという姿勢が貫かれている。
安定性を重視する哲学
Slackwareには安定性への徹底したこだわりがある。新しいバージョンは十分なテストを経て、すべてのコンポーネントが確実に動作することが確認されてからリリースされる。
この慎重なアプローチは、システムの信頼性を優先するユーザーに支持されている。頻繁なアップデートは新機能をもたらす一方で、予期せぬ不具合を招くリスクもある。Slackwareは、そうしたリスクを最小限に抑えることを選択しているのだ。
ユーザーへの影響
メジャーアップデートが稀であることは、使用するソフトウェアのバージョンが古くなりがちという負の面を持つ。最新機能を求めるユーザーにとって物足りないのは自然な感覚だ。
セキュリティパッチは継続的に提供されるため、古いバージョンを使い続けることによる安全性の問題は適切に対処されている。また、必要に応じて自分でソフトウェアをコンパイルして最新版を導入することも可能だ。Slackwareのシンプルな構造は、こうしたカスタマイズを容易にしている。
長期サポートという価値
頻繁なアップデートがないということは、長期に同じ環境を維持できるということの裏返しでもある。システムの再構築や設定のやり直しが少なくて済むため、一度環境を整えてしまえば長く使い続けられる。
企業のサーバーや研究機関のシステムなど、安定した動作環境の維持が求められる場面では、この特性が大きな強みとなる。頻繁なバージョンアップによる作業負担や、互換性の問題に悩まされることが少ないのだ。
Slackwareの開発ペースは、現代のソフトウェア開発の常識からすれば異常かもしれない。しかし、それは単なる怠慢ではなく、品質と安定性を追求した結果である。この姿勢に共感するユーザーが、30年以上にわたってSlackwareを支持し続けているのだろう。




