Linuxを自分のPCで動かす方法は、大きく分けて3つのルートがある。自分の目的や、今のPC環境をどうしたいかに合わせて最適な道を選ぼう。
導入前に知っておくべき3つのルート
一番シンプルな方法は「メインOS」としてインストールすることだ。使っていない古いPCの再利用や、Linux専用マシンを作るときに向いている。今のデータをすべて消して、PCの中身をLinuxだけにする。この方法なら、PCが持つ本来の性能を最大限に引き出せる。
今のWindows環境をそのまま残したいなら「デュアルブート」を選ぶ。 1台のストレージの中に、Windows用とLinux用の2つの部屋を作るイメージだ。 PCの電源を入れた直後に、どちらのOSを立ち上げるか選べる。ただし、ディスクの容量を切り分ける作業が必要になる。
最も安全に試したいときは「仮想環境」を利用する。 Windowsの中で、一つのアプリとしてLinuxを動かす仕組みだ。有名なソフトには「VirtualBox」や「VMware」がある。今の設定を全く変えずに、手軽に操作感を体験できる。
事前準備
導入作業をスムーズに進めるために、あらかじめ道具を揃えておこう。
途中で作業が止まらないよう、以下の4つを事前に確認する。
インストールに必要な道具と環境
まずは、8GB以上の容量があるUSBメモリを1本用意する。このメモリは、Linuxを起動するための「インストールメディア」として使う。中身のデータはすべて消去されるため、必ず空のメモリか消えても良いものを選ぼう。
次に、安定したインターネット環境を確保する。インストール中に最新の修正プログラムや、日本語化に必要なデータを自動で取り込む。無線LANでも進められるが、通信が安定している場所で作業しよう。
自分のPCとデータの確認
最も大切なのが、今のデータのバックアップだ。OSの導入はディスクの構成を書き換える大きな作業でありインストール失敗も珍しくない。操作ミスや予期せぬエラーでデータがすべて消えてしまうので、大事な写真はクラウドや外付けHDDへ移しておこう。
最後に、PCのストレージの空き容量をチェックする。Linuxを動かすだけなら、目安として30GBから100GB程度の空きがあれば十分だ。容量に余裕があるほど、後からアプリを増やしたり大きなファイルを保存したりするときに困らない。
導入の基本フロー
実際の導入作業は、大きく分けて5つのステップで進む。 一つずつ順番にこなせば、初心者でも迷わずに完了できる。 まずは、Linuxの「インストールメディア」となるUSBメモリを作りそこからPCを起動する。
ISOファイルをダウンロードする
↓
起動用USBメモリを作る
↓
BIOS(UEFI)画面で起動順序を変える
↓
Liveモードで動作を確認する
↓
インストーラーを実行して完了させる
USBメモリでPCを起動するとは?
「USBメモリでPCを起動する」という言葉は、イメージしにくいかもしれない。通常、PCは内蔵されているSSDやHDDからWindowsを読み込んで立ち上がる。これに対して、一時的に「USBメモリの中にある別のOS」を優先して読み込ませる。
PCという「再生機」に、Windowsという「古いカセット」ではなく、Linuxという「新しいカセット」を差し込んで再生させるようなものだ。 USBメモリの中にインストール専用のシステムを書き込んでおくことで、今のWindowsを壊すことなく、一時的にLinuxを動かせる。
なぜこの作業が必要なのか
PCは電源を入れると、まず「どこにOSが入っているか」を順番に探しに行く。標準の設定では「1番目に内蔵ディスク」を見に行くため、放っておくといつも通りWindowsが起動してしまう。そこで、この順番を無理やり書き換えて「1番目にUSBメモリ」を見に行かせる必要がある。
これがうまくいくと、PCの中身を一切書き換えることなく、USBメモリからLinuxが立ち上がる。この状態ならまだPCのデータは消えていない。実際に使い心地を試してみて、気に入ったらそのまま本番のインストールへ進めるのがLinuxの常識だ。この段階で問題があるようなら、そのディストリビューションはインストールしないほうが良い。
PC起動用のUSBメモリを作る
そこで第一歩は、PCを起動するためのUSBメモリを作ることになる。まずは、導入したいLinuxの公式サイトから「ISOファイル」をダウンロードしよう。 ISOファイルとは、OSのインストールに必要な膨大なデータを一つにまとめた「ディスクの分身」のようなものだ。
次に、このファイルをUSBメモリへ書き込む作業に入る。単にファイルを保存するだけでは、PCはOSとして認識してくれない。専用ツールの「Rufus」や「balenaEtcher」を使い、USBメモリを「起動専用のドライブ」へと作り変える。書き込みが完了したUSBメモリをPCに挿し、準備を整えよう。
PCの電源を入れた直後に、F2キーやDeleteキーを連打して「BIOS(UEFI)」画面を呼び出す。連打すべきキーはマザーボードのメーカーごとに決まっている。画面の隅に表示される案内を見逃さないか、事前にマザーボードの説明書を確認する。
BIOS画面が開いたら、起動デバイスの優先順位(Boot Order)の設定を探す。ここで、内蔵ディスクよりも「USBメモリ」が先に読み込まれるように順番を入れ替える。設定を保存して再起動をかければ、PCはUSBメモリからLinuxのプログラムを読み込み始める。
動作確認からインストール完了まで
USBメモリからLinuxが立ち上がると、まずは「Liveモード」というお試し環境が画面に映る。このモードはPCの内蔵データを一切書き換えず、メモリ上だけで動作する仕組みだ。本番のインストールを始める前に、ここでWi-Fiの接続状況や音の出力、画面の解像度が正しいかを十分にチェックしよう。手持ちの周辺機器が正常に動くことを確認できたら、デスクトップにある「インストール」アイコンをダブルクリックして作業を開始する。
インストーラーが起動したら、まずは使用言語を「日本語」に設定し、キーボードの配列を正しく選ぶ。次に最も重要な「インストールの種類」を決める工程に入る。初心者や、そのPCをLinux専用機として使うのであれば、「ディスクを消去してインストール」を選択するのが最も確実で簡単だ。
パーティションとファイルシステムの具体的な設定
もし手動で領域を細かく分ける「パーティション設定」を行うなら、自作PCで一般的な500GBから1TB程度のストレージを想定した、以下の初心者向けのシンプルな構成を例に挙げる。
ファイルシステムには、Linuxで標準的で安定している「Ext4」が無難。WindowsのNTFSに近い役割を持ち、データの読み書きが速いうえ、不意の電源断といったトラブルにも強い。また大容量のSSDが主流の現代では「ルート」「home」あえて分ける必要はない。
メモリを16GB以上積んでいるPCなら、専用の「スワップ領域」を確保する必要もほとんどない。今のLinuxは、必要に応じてファイル形式でメモリを補う「スワップファイル」を自動で生成するからだ。
最後に、PCへログインするためのユーザー名とパスワードを登録すれば、残りの作業はすべて自動で進む。インストール完了のメッセージが表示されたらUSBメモリを抜き、PCを再起動しよう。
自作PCユーザー特有の注意点(ハードウェア編)
自作PCはパーツを自由に選べる分、Linuxとの相性が重要になる。特に最新パーツや特定のメーカー品を使うときは、以下の点に気を配ろう。
グラフィックボードとドライバの選択
NVIDIA製のグラフィックボードを使っているなら、導入後にひと手間が必要だ。Linuxの標準状態では「ヌーヴォー(nouveau)」という汎用ソフトで画面を映す。しかし、これだけではグラフィックボード本来の力を出し切れない。ゲームや動画編集をするなら、メーカーが配る「プロプライエタリ・ドライバ」を入れよう。設定画面の「追加のドライバー」から、推奨される項目を選ぶだけで適用できる。
マザーボードの独自設定
最近のマザーボードには「セキュアブート」という保護機能が備わっている。これが有効だと、Linuxの起動がブロックされてしまう場合がある。もしインストールメディアから起動できないときは、BIOS画面でこの機能を一時的にオフにしよう。また、ストレージの動作モードが「RAID」になっていると認識されないため、必ず「AHCI」に設定する。
インストール直後に必ずやるべき3つのこと
デスクトップ画面が表示されたら、導入作業は最終段階だ。
快適で安全に使うために、以下の3つの設定を済ませておこう。
システムを最新の状態に更新する
まずは、OSの中身を最新のセキュリティ状態に書き換える。Linuxでは「端末(ターミナル)」という黒い画面に命令を打ち込むのが一般的だ。以下のコマンドを入力して実行すると、未適用の更新プログラムがすべて入る。ちなみにDebian系ディストリビューションのコマンドだ。
sudo apt update && sudo apt upgradeパスワードを聞かれたら、インストール時に決めたものを入力する。
入力中は文字が表示されないが、そのまま打ち込んでEnterキーを押せば進む。
日本語入力の環境を整える
デスクトップが表示された直後のLinuxは、実はまだ「日本語が読めるだけ」の状態だ。日本語を正しく入力するには、言葉を変換する「エンジン」と、それを取りまとめる「システム」の両方を整える必要がある。この設定はLinux導入における最初の難所であり、Windowsのように最初から万全ではないことを覚悟しよう。
Linux Mintでの具体的な設定手順
初心者向けの「Linux Mint」を例に、具体的な導入フローを確認しよう。作業は「プログラムの導入」「システムの指定」「反映」の3段階で進む。まずは「端末」を開き、日本語入力に必要なセットを一括で取り込む。入力エンジンの「Mozc」と、それを管理する「Fcitx」、さらに文字化けを防ぐためのフォントをインストールしよう。
sudo apt update
sudo apt install fcitx-mozc fcitx-config-gtk3 fonts-noto-cjk fonts-noto-color-emoji次に、システムに対して「今後はFcitxを優先して使う」と指示を出す。メニューの「設定」から「入力メソッド」を開くか、以下のコマンドを打ち込んで専用の選択画面を呼び出そう。
im-config画面が表示されたら、設定の変更を許可して、一覧から「fcitx」を選んで確定させる。
この設定をシステムに深く認識させるため、一度PCを再起動しよう。
sudo reboot再起動が終わると、画面の右下にキーボードのアイコンが現れる。このアイコンを右クリックして設定を開き、入力リストの中に「Mozc」が含まれているか確認する。もし見当たらなければ、追加ボタンから「Mozc」を探してリストに入れよう。これでようやく、日本語と英語を自在に切り替えて打ち込める環境が完成する。
日本語入力が「意外と難しい」理由
Linux Mintのようなメジャーなディストリビューションなら画面操作で済むが、そうでない種類は一気に難易度が上がる。さらに、設定ファイルの中身を直接書き換える「環境変数の追記」が必要になる場面も多い。日本語入力が不能なディストリビューションもある。また、デスクトップの見た目(デスクトップ環境)が変われば、設定画面の名前や場所も全く別物になる。この設定を正しく終えないと使い物にならない。
最適なドライバを適用する
自作PCの性能をフルに発揮させるには、OS標準の汎用ドライバから、パーツメーカーが提供する専用ドライバへの切り替えが欠かせない。グラフィックボードの描画性能や、最新規格のWi-Fiチップの通信速度は、この設定一つで大きく変わる。
Linux MintやUbuntuには、ハードウェアを自動で判別する「ドライバマネージャー(追加のドライバー)」というツールが備わっている。メニューからこのツールを起動すると、システムが自動でPC内のパーツをスキャンし、利用可能なソフトのリストを表示する。
リストの中に「nvidia-driver」などの項目があれば、それがメーカー公式のドライバだ。基本的には「推奨(recommended)」や「検証済み」と書かれた最新のバージョンを選択し、「変更を適用」ボタンを押そう。インストールには数分かかるが、この作業によって画面のチラつきが消え、3Dゲームや動画編集もスムーズに動くようになる。
もしリストに何も表示されない場合は、すでに最適なドライバが組み込まれているか、あるいは手動で公式サイトから探す必要がある。自作PCで最新のパーツを組み込んだ直後は、このツールを真っ先に確認する癖をつけておこう。
