
ホームセンターのネジ売り場に初めて足を踏み入れたとき、その圧倒的な種類の多さに驚くのは当然だ。壁一面に並ぶ小さな箱や袋の中には、数十種類を超えるネジが整然と陳列され、多くの初心者は圧倒される。
混乱をきたすのは、ネジについての理解がないからだ。ネジには用途に応じ明確な使い分けがある。適当に選んでしまうと取り付けられなかったり、すぐに緩んだりする。
自作PCのケースを組み立てるときに選ぶネジと、木製の棚を壁に固定するときに使うネジは全く異なる。
ネジ売り場で途方に暮れたくないなら、何に使うかを明確にしておくことだ。金属同士を固定するのか、木材に打ち込むのか、それとも壁に重いものを掛けるのか。用途が決まれば、選ぶネジの種類は自然と絞り込まれる。
初心者がネジ売り場で立ち往生する理由の多くは、専門用語や規格番号の意味が分からないことにある。「M3×10」「木ネジ4×25」といった表記を見ても、どれが自分の求めるものなのか判断できない。
用途別の選び方から、実際の購入時に確認すべきポイントまで理解して、迷わずに最適なネジを確実に選べるようにしていこう。
用途で選ぶネジの種類—目的別に正しいネジを使うコツ
ネジは取り付ける素材に合わせて選ぶ。素材が違えば、使うネジも全く異なるため名称と特徴を知っておこう。間違った種類を選ぶと、しっかり固定できないだけでなく、素材を傷めてしまう。
木材に使うネジは「木ネジ」と「コーススレッド」が代表的だ。


木ネジは先端が尖っており、木材に直接ねじ込める構造になっている。本棚の組み立てや額縁の取り付けなど、家庭内の木工作業で最も頻繁に使われる。
コーススレッドは木ネジよりも太く、ネジ山の間隔が広い特徴を持つ。厚い木材同士を強固に固定したいときや、重量のある棚を作るときに威力を発揮する。


金属部品の固定には「小ネジ」や「ボルト」を選ぶ。小ネジは自作PCのケース組み立てで使われる代表的なネジで、金属に開けられた穴にねじ込む。パソコンのマザーボードやハードディスクの取り付けには、必ずこの小ネジを使う。
ボルトは小ネジよりも太く、ナットと組み合わせて金属同士を強力に固定する際に使われる。

薄い金属やプラスチックには「タッピングネジ」が適している。このネジは自分でネジ穴を作りながら進むため、下穴を開ける必要がない。家電製品のケースや車のパーツ交換でよく使われる。先端が尖っているため、柔らかい素材でも簡単にねじ込める。


壁に重いものを取り付ける場合は「アンカーボルト」や「壁用ネジ」を選ぶ。石膏ボード壁には専用のアンカーを使い、コンクリート壁にはコンクリート用のネジを使う。普通の木ネジを石膏ボード壁に使うと、重量で抜け落ちる危険性が高い。
素材と用途を間違えると、ネジが効かなかったり、取り付け物が落下したりする。購入前に「何の素材に」「何を取り付けるか」を明確にして失敗を避けよう。
パソコン用のネジの種類とその用途
パソコンを自作するとき、適切なネジを使わないと、パーツが固定できなかったり、ネジ穴が壊れたりする。ネジには種類があり、それぞれ使う場所が決まっている。ここでは、パソコンに使われる主要なネジの種類と、その用途について説明する。
インチネジ・ミリネジ
もっともよく使われるのが「インチネジ(6-32UNC)」である。主に電源ユニットや3.5インチHDDの固定に使われ、太くてしっかりした作りが特徴。手回しできるタイプもあり、頻繁に付け外しをする場所にも適している。一方で、細いネジ穴には使えないため、マザーボードなどには不向きだ。
マザーボードやSSDの取り付けには「ミリネジ(M3)」が使われる。M3は直径3ミリで、6-32より細く、精密な部品に適している。2.5インチのSSDやノートPC用のHDDは、このネジで固定することが多い。PCケースによっては、両方のネジが混在しているため、間違えないように注意が必要である。
「プラスドライバー(No.2)」が、6-32UNCネジやM3ネジなどに適している。ドライバーの先端サイズが合っていないと、ネジ山を潰したり、工具が滑ってパーツを傷つけたりするので合ったサイズを選ぼう。
M.2スロット
NVMe SSDなどのM.2スロットに使うネジは、さらに小型の「M2」または「M2.5」である。M2 SSDは非常に薄く小さいため、専用の小さなネジで固定する必要がある。紛失しやすいので、市販されているネジセットを用意しておくと安心だ。
M.2 SSDなどの極小ネジには、「精密ドライバー(No.0〜No.1)」を使う。これらは先端が細く、小さなネジにもぴったりフィットするため、繊細な作業に適している。ノートパソコンの分解や、小型ファンの取り付けにも精密ドライバーは活躍する。
スペーサー

そのほかにも、マザーボードをケースに取り付ける際には「スペーサー(スタンドオフ)」という金属製の土台がある。これにネジを締めることで、基板を浮かせてショートを防ぐ。スペーサーのネジもインチとミリが混在するため、サイズをよく確認して使う。
ネジ穴の規格は「6-32UNC」か「M3」が一般的で、ケース側にねじ込む部分と、マザーボード側に固定するためのネジ穴が一体になっている。ケースによって規格が異なるため、事前に確認しておくと混乱を防げる。
六角スタンドオフをしっかり固定できるのは「六角レンチ」や「小型スパナ」だが、パソコン内部は狭いため回しにくい。「スタンドオフ用ナットドライバー」があるとスムーズだ。手でねじ込むだけでは緩みやすいため、工具でしっかり締める。
パソコン用ネジは見た目が似ていても、よく見ると違う。ネジ山の間隔や直径を確認しながら、部位ごとに適したネジを選んでいこう。
自作PCの組み立て全体については、自作パソコン組み立ての大まかな流れで詳しく解説している。ネジの選び方だけでなく、組み立ての各工程を理解しておくと作業がスムーズになる。
ホームセンターにはパソコン用ネジがないかも
ホームセンターではパソコン専用のネジは取り扱っていないことが多い。木工や日曜大工向けのネジは豊富にそろっていても、マザーボードやSSDの取り付けに使うような小型ネジやスタンドオフ、インチネジなどは並んでいないのが普通だ。
パソコン用ネジが欲しいなら、PCパーツ専門店やネット通販が確実である。とくにネットショップでは、M.2 SSD用の極小ネジや、ATXケース用のスタンドオフ付きネジセットなど、用途別に細かく分類された商品が豊富にそろっている。
ホームセンターで探す場合は「6-32UNC」や「M3」といった表記のあるものを選ぶ。合ったサイズや形状のネジが見つかる可能性が低いため、 PC専門店やネットショップを頼るのが無難である。
ネジの頭の形と対応工具—合わないと作業が進まない!
ネジ選びでは素材だけでなく、「頭の形」も作業効率と仕上がりを大きく左右する重要な要素だ。頭の形によって使える工具が決まり、完成後の見た目も変わる。適切な形を選ばないと、作業が進まなくなったり、美しく仕上がらなかったりする。

最も一般的な「なべ頭」は、上部が丸く膨らんだ形状で、完成後もネジ頭が表面に出る。家具の組み立てや一般的なDIY作業で幅広く使われる。プラスドライバーまたはマイナスドライバーで回せるため、工具を選ばない利便性がある。
「皿頭」は頭部が平らで、表面と同じ高さまで沈み込む。木材の表面を平滑に仕上げたいときや、上に別の部材を重ねるときに重宝する。頭が出っ張らないため、すっきりとした印象になるが、皿頭用の下穴を正確に開ける必要がある。
「トラス頭」はなべ頭よりも薄く、直径が大きい。薄い材料に使ってもしっかりと固定でき、頭部の接触面積が広いため緩みにくい。精密機器や薄い金属板の固定でよく使われる。
六角形の「六角ボルト」は、六角レンチまたはスパナで回す構造になっている。他の頭部形状よりも大きなトルクをかけられるため、重要な部分の固定や分解が必要な箇所に適している。自転車のメンテナンスや機械の組み立てで頻繁に使われる。
頭の溝も重要な選択ポイントだ。プラス溝は最も一般的で、マイナス溝は昔ながらの形状、六角穴は高いトルクに対応できる。作業前に使う工具を用意しておこう。
完成後の見た目を重視するなら皿頭、取り外しの可能性があるなら六角ボルトというように、用途に応じて使い分ける。
ドライバーの選び方については、ネジをしめる道具ドライバーの選び方完全ガイド|用途別おすすめ工具6選で詳しく紹介している。適切な工具を使うことで、ネジ山を潰すリスクを大幅に減らせる。
サイズ表記を読めるようになる—M4×20は何を意味する?
ホームセンターのネジ売り場で最も困惑するのが、「M4×20」「3.8×25」といったサイズ表記だ。この数字の意味を理解できれば、求めるネジを正確に選べる。
M4×20?
「M4×20」の読み方から説明しよう。最初の「M4」はネジの太さ(直径)を表し、「メートルネジの4ミリ」という意味だ。後の「20」はネジの長さを示し、20ミリメートルを表している。つまり、太さ4ミリ、長さ20ミリのネジということになる。
木ネジの場合は「3.8×25」のような表記が一般的だ。これは直径3.8ミリ、長さ25ミリの木ネジを意味する。金属用の小ネジは「M」が付くが、木ネジには付かない違いがある。
太すぎるネジを選ぶと、木材が割れたり、穴が大きくなりすぎてしっかり固定できなくなったりする。逆に細すぎると、重量に耐えられずに折れる危険性がある。
長さの注意
長さの選び方も重要だ。基本的には、固定したい部材の厚さの2倍以上の長さを選ぶのが安全だ。例えば、厚さ10ミリの板を固定するなら、20ミリ以上の長さのネジが必要になる。ただし、長すぎると裏側に突き出てしまう恐れがある。
実際の測定方法として、ネジの長さは頭の下から先端までを測る。皿頭の場合は頭も含めた全長が長さになるため注意する。
購入前には取り付ける部材の厚さを正確に測り、適切な長さと太さのネジを選ぶ。迷ったときは、ホームセンターの店員に「厚さ○ミリの木材に使いたい」と具体的に伝えれば、適切なサイズを教えてもらえるだろう。
初心者がやりがちな失敗と選び方のコツ
ネジ選びでは、経験不足による典型的な失敗パターンがある。これらを事前に知っておけば、無駄な買い直しや作業のやり直しを避けられる。
最も多い失敗は「ネジが長すぎて裏に突き出る」パターンだ。厚さ12ミリの板に25ミリのネジを使うと、13ミリも飛び出してしまう。壁に取り付ける際は壁を傷つけ、人に当たれば怪我の原因にもなる。購入前に取り付け部材の厚さを正確に測り、余裕を持たせつつも突き出ない長さを選ぶ。
「頭の形を間違えて見た目が悪くなる」失敗も頻発する。表面を平らに仕上げたいのになべ頭を選んでしまうと、ネジ頭が出っ張って不格好になる。逆に、皿頭を使いたいのに適切な下穴を開けないと、頭が沈まずに浮いてしまう。完成後の見た目をイメージして頭の形を選ぶべきだ。
「手持ちの工具に合わないネジを選ぶ」のもやりがちだ。六角穴のネジを買ったのに六角レンチを持っていない、プラスドライバーのサイズが合わない、といった状況だとストレスがたまる。購入前に対応する工具を確認しておこう。
自作PCを組み立てる際にパーツを破損させないための注意点は、せっかくの自作PCを台無しにする原因:パーツ破損を防ぐで解説している。ネジの扱いも含めた総合的な注意事項を確認しておくと失敗を防げる。
作業中の失敗では「ネジ山を潰してしまう」ケースが多い。力を入れすぎたり、サイズの合わないドライバーを使ったりすると、ネジ頭の溝が潰れて回せなくなる。適切なサイズの工具を使い、無理な力をかけないのが基本だ。
同じ規格のネジを複数本購入する際は、予備として数本多めに買っておくと安心だ。
店頭でネジを選ぶときは、パッケージに実物サンプルがついていれば必ず確認する。透明なケース越しでも、太さや長さの感覚を目で見てつかめる。
使用中のネジや取り付け予定の部品を持参すると確実だ。ネジの規格は見た目が似ていても微妙に異なる。
不安なら売り場の店員に相談する。できるだけ具体的な用途を伝える。現物を見せて相談すると確実だ。サイズに不安があるときは、少量ずつ入ったアソートパックを選ぶのもひとつの方法だ。
目的別おすすめネジと買うべき具体的製品5選
具体的なDIYシーンに応じて、実際に購入すべきネジを5つ厳選して紹介する。これらを揃えておけば、家庭内のほとんどの作業に対応できる。
木工作業には「コーススレッド 3.8×25mm」が最適だ。本棚の組み立てや壁面収納の取り付けで威力を発揮する。頭が小さく木材に沈み込みやすいため、仕上がりも美しい。ホームセンターでは100本入りで300円程度で購入できる。
自作PCや精密機器には「小ネジ M3×8mm」を選ぶ。マザーボードの固定やハードディスクの取り付けで必須のネジだ。パソコン関連の作業では、このサイズが圧倒的に多用される。電子部品店で20本入り200円程度で入手可能だ。
薄い金属板やプラスチックケースには「タッピングネジ 3×12mm」が便利だ。家電製品の修理や車のパーツ交換で活躍する。下穴不要で作業効率が良く、しっかりと固定できる特長がある。
壁掛け作業には「石膏ボード用アンカー付きネジ」が安全だ。重さ10キロまでの額縁や時計の取り付けに対応できる。普通のネジでは抜け落ちる危険があるため、専用品を使う必要がある。
汎用性重視なら「皿頭木ネジ 4×20mm」を常備しておく。表面を平らに仕上げられるため、上に別の部材を重ねる作業で重宝する。
まとめ
同じ規格のネジを複数の作業で使い回せるよう、汎用性の高いサイズを用意しておく。また、作業途中でネジが足りなくなるのを防ぐため、必要本数より多めに購入し保管しておく。残ったネジがあれば、突発的なDIY作業にも対応できる。





