
Windows 10のサポートが終了するからと怯えてWindows 11へのアップグレードに挑んだものの、失敗に終わったユーザーは少なくないはずだ。そもそもWindowsの大型アップデートは、PCを使用不能にしてしまうことで昔から有名だ。
アップデートの中に、BIOS(バイオス)やUEFI(ユーイーエフアイ)といった基盤ソフトの書き換えが含まれている場合、古いPCでは致命的な不具合を引き起こすことがある。最悪の場合、電源は入るものの画面が真っ暗なままで何もできないという、いわゆる「文鎮化」状態に陥ることもある。
メーカー保証の切れたパソコンだと、「修理不可」と案内され、サポート窓口でも買い替えを勧められる。この流れ、どこかで見覚えがないだろうか。
そしてジャパネットだ。
ジャーパネっと、ジャパネット♪夢のジャパネットたかた♪
「最新NECノートPCが今だけ割引!下取りキャンペーンも実施中!」
といった宣伝がタイミングよく流れる。こうなることを知っていて準備していたかのように。「パソコンが壊れちゃいましてぇ」と苦笑する無知なMC。アップグレードに失敗してからパソコンとローヤルゼリー王乳をジャパネットに買わされるまでがセットのようだ。
ジャパネットたかたに限った話ではない。家電業界は「買い替えサイクル」を前提にビジネスを組んでいる。アップデートによって不具合が起きるたび、販売側には「追い風」が吹く。
テレビ通販は、「パソコンに詳しくない世代」をターゲットにしている。「今すぐ電話すれば設定済みのパソコンが届く」という安心感で、買い替えに誘導する。「風が吹けば桶屋が儲かる」は真実だが、「BIOS壊せばたかたが儲かる」は自然に吹く風ではない。
裏を返せば、新たにパソコンを購入させたいならWindowsのアップデートひとつで可能ということだ。「壊れ」て「買う」のではなく、「壊され」て「買わされ」る。
そんな未来が、ジャパネットたかたのスタジオの照明の下で静かに進行していることに、BIOSを破壊されてようやく感づいた者もいるのではないだろうか?
Windowsのアップグレードが生み出す「PCゴミ」の山
Windows のバージョンアップは、「電子ゴミ製造機」のような役割を果たしている。サポート対象外の古いPCが大量に排除されるのだ。
まず、Windows 11は「TPM 2.0」「UEFI対応」「第8世代以降のIntel CPU」など、一般的な家庭用PCとしてはかなり高めの要件を課しているため、たった数年前に買ったPCでさえアップグレード対象外になる。結果、「更新できないなら買い替えるしかない」という流れが自然に生まれる。
仮にアップグレードできたとしても油断はできない。ドライバが不安定になったり、動作が遅くなったり、意味のわからないエラーに悩まされることが多い。そうなれば、ユーザーは「やっぱり新しいのを買おうか」と考えてしまう。つまり、アップグレードしただけで「不便さ」が買い替えを後押ししてしまうスキームになっている。
さらに問題を深刻にしているのが、ユーザーの知識不足だ。古いPCでもLinuxを入れれば現役で使えることを知らない人は「もう古いし捨てよう」で終わる。こうして、まだまだ使えるPCがゴミとして処分される。SDGsなどとどの口が言っているのか。
だが、販売側にとっては願ってもない展開だ。サポート外→動かない→買い替えという流れができれば、新しいモデルが売れる。テレビ通販で人気のジャパネットたかたのような企業は、この「買い替え特需」をうまく利用している。「下取りキャンペーン実施中」「設定済みですぐ使える」といった謳い文句で、古いPCからの乗り換えを後押しする。
これは計画的陳腐化(Planned Obsolescence)と呼ばれる古典的な戦略に過ぎない。ユーザーは気づかないうちに、買い替えサイクルに巻き込まれているだけだ。
計画的陳腐化(けいかくてきちんぷか、英語: Planned obsolescence)(意図的陳腐化や早すぎる陳腐化とも呼ばれる)とは、製品の寿命を人為的に短縮する仕組みを製造段階で組み込んだり、短期間に新製品を市場に投入することで、旧製品が陳腐化するように計画し、新製品の購買意欲を上げるマーケティング手法のこと。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%88%E7%94%BB%E7%9A%84%E9%99%B3%E8%85%90%E5%8C%96
高齢者や文系などの知識のないユーザーが狙われている。彼らはLinuxなどの代替手段など知らない。困ったらテレビ通販や家電量販店に相談するしかない。「もう直らない」「新しいパソコンに買い替えましょう」という口車にまんまと乗せられて大きな金銭負担を強いられる。
国際連合の統計によれば、2024年の世界の電子ゴミは約6,200万トンに達した。そのなかで、Windows 11の導入をきっかけに、仕様非対応のPCが一斉に買い替えられたことで、排出量はさらに増えた。約4億台のPCが非対応とされており、それがそのまま「潜在的なゴミ」になっている。
本来なら、これらのPCはLinux MintやXubuntuなどの軽量OSを使えば、実用的な端末として再生できる。ファイルサーバや子供用PC、プログラミング学習用のマシンとしても活用できるはずだ。
それでも多くの人が知らずに捨ててしまうのは、あまりにももったいない話である。アップグレードという名のもとに、使えるPCがごっそりと処分され、新しいPCが売れる構造。そこには、私たちが思っている以上に巨大な利権と仕組みが横たわっている。
Windowsユーザーは「OSを自分で入れる」という発想がない
多くのWindowsユーザーは、OSを自分でインストールした経験がない。むしろ、それが普通だと言える。新しく買ったパソコンには最初からWindowsが入っており、電源を入れるだけですぐ使える。「OSは最初から入っているもの」という認識が一般的だ。
そもそも、BIOSやUEFI、ブートローダーといった基本的な仕組みに触れる機会もほとんどない。BIOSが何なのか知らないのに、「有料だからWindowsは信頼できる、無料のLinuxはゴミ」などと居丈高になっている者もいるが、残念ながらこれが一般人より少し賢いとされる人間の水準だ。
OSの入れ直しやクリーンインストールは、専門知識が必要な難しい作業だと思われている。たしかに、間違えればデータが消えるし、ドライバの再インストールやライセンス認証など、面倒な手順もある。だからこそ、「やったことがない人」が大半なのだ。
加えて、Microsoft自身が「自分で入れ直さなくてもいい」と言わんばかりに、Windows Updateでの自動アップグレードを推奨している。ボタンひとつで新しいバージョンに更新できるなら、それに従うのが自然な流れになる。
一方で、Linuxユーザーや自作PCユーザーの世界ではまったく事情が違う。Live USBからの起動や、BIOS設定の変更は日常的。インストールするOSの選定から、パーティションの設計、ブートローダーの設定まで、自分で細かくコントロールするのが当たり前になっている。
この差が何を意味するか。Windowsでアップデートや不具合が起きたとき、多くの人は自力で対処できない。その結果、修理に出すか、買い替えるしか選択肢がなくなる。そしてそこに、またしても「買い替え特需」を狙う販売業者の商機が生まれる。
OSを自分で入れ直す文化がなければ、不具合=終わりという発想になってしまう。つまり、Windowsの仕組みそのものが、ユーザーに「買い替えという選択」を刷り込んでいるとも言える。
やっぱりLinuxにチャレンジするといい理由
結論から言うと、Linuxに挑戦するのは非常におすすめだ。次のポイントに共感できるなら、なおさら価値がある。
まず、Windowsの強制アップデートから解放される点が大きい。勝手に再起動されてBIOSまで影響を受ける心配がなく、更新のタイミングや内容を自分で決められる。これだけでもストレスが大幅に減る。
また、Linuxは軽くて速い。古いパソコンでも、XfceやLXQtなどの軽量なデスクトップ環境を使えば快適に動く。SSDがなくても十分使える点も魅力だ。
さらに、Linuxを使うとパソコンの内部構造が自然とわかってくる。BIOSやブート、パーティションの仕組みが理解でき、トラブルが起きても自分で解決できる力がつく。これが長い目で見て大きな財産になる。
加えて、Linuxは無料で使える。ライセンス料がかからず、アップグレードも無償だ。広告が勝手に出ることもなく、クリーンな環境を保てる。
加えて、BashやPython、cronなどのツールを使いこなせば、自分のパソコンを自在に動かせるようになる。プログラミングや自動化にも強くなり、将来的なスキルアップにもつながる。
ただし、注意点もある。ゲームは基本的に対応が難しいか工夫が必要だ。SteamのProtonを使えば動くものも増えているが、まだ完全ではない。また、一部の特殊なプリンタや法人向けアプリなどは動かないことがある。最初はデスクトップ環境の違いやファイルシステムの仕組み、ソフトの入れ方に戸惑うことも多い。
それでも、パソコンをもっと自由に使いたいなら、Linuxにチャレンジする価値は十分にある。
Windowsの操作に慣れてもPCの中身はわからない理由
Windowsは初心者でも迷わず使えるように、「考えさせない設計」になっている。便利といえば便利だが表面的な操作を覚えるにとどまり、パソコンの仕組みにはほとんど触れられず、老人や文系は初心者から抜け出せない。パソコンを操作しているというより、Windowsというアプリケーションを使っているだけだからだ。
ファイルの整理ができるようになったと感じても、それはエクスプローラーの基本操作に慣れただけだ。設定を変えられるようになっても、GUIのコントロールパネルや設定アプリを使いこなしているだけで、裏で何が起きているかはわからない。トラブル対応も、サポートに連絡して初期化するだけで根本的な理解にはつながっていない。
Windowsの操作は学べても、パソコンの内部はブラックボックスのままだ。
一方でLinuxは、GUIもあるがその裏側の仕組みが見えるようになっている。例えば、
systemctl restart bluetooth
といったコマンドを使うと、サービスの動きやプロセス管理、ログ確認などの概念に触れることができる。これはWindowsでデバイスが動かないときに「ドライバを再インストールしろ」と言われるだけの対応とは大きく違う。
また、Excelを覚えてもExcelだけに通じるが、Bash(Linuxのコマンドライン)を覚えれば他のUnix系システムでも使える。Windowsの操作は基本的にWindowsに限られる知識だ。
Linuxを触ると、コマンドラインやネットワーク、システム構造、スクリプトによる自動化など、パソコンの深い部分を自然に学べる。
まとめると、Windowsは「使い方を覚えるための道具」、Linuxは「パソコンの仕組みを学ぶための道具」だ。パソコンを本当に理解したいなら、Linuxを使うことが大きな助けになる。
どうせPCが壊れたならLinuxに挑戦してみよう
壊れたパソコンを手にしたなら、Linuxに切り替える絶好のタイミングだ。データが初期化されて問題ない状態なら、まっさらな環境で試せる。OSの移行に伴うリスクを気にせずに思い切って挑戦できる。
また、元の環境に戻す必要がないため、デュアルブートやバックアップの面倒もない。もし操作ミスやトラブルがあっても、学びの一環として割り切れるのが強みだ。
さらに、古いパソコンやスペックの低いマシンでも、Linuxなら軽快に動かせる。HDD搭載のPCはWindowsよりもはるかにサクサク動くことが多い。だからこそ、壊れたと感じたPCでも、Linuxなら現役復帰させることが可能だ。
こうした行動は、無駄な電子ゴミを増やさないための正しい選択でもある。壊れたPCを捨てる前にLinuxで再活用することは、環境にも財布にも優しい。





