
パソコンの動作が急に遅くなったとき、最初に疑うのはソフトウェアやドライバの不具合かもしれない。だが、意外と見落とされやすいのがCPUの温度上昇だ。CPUは熱を持ちすぎると自動で性能を落とす「サーマルスロットリング」という仕組みが働く。
この機能はCPUの破損を防ぐために必要だが、処理速度は大きく落ちてしまう。
CPU温度が高くなる原因はいくつかあるが、そのなかでも盲点になりやすいのが「CPUクーラーのネジの緩み」だ。自作パソコンや大型の空冷クーラーを使っていると、振動や経年劣化、輸送時の衝撃などでネジがゆるむことがある。
ネジが緩んでいると、ヒートシンクとCPUの間に隙間ができてしまい、熱がうまく伝わらなくなる。その結果、冷却が不十分になり、CPUの温度が上がる。
このような単純な原因でも、症状としては高温や処理速度の低下、フリーズなどが発生するため、初心者は深刻なハードウェア故障と勘違いしやすい。実際には、ドライバー一本で解決できるケースも多い。
普段からCPU温度をモニタリングしておけば、異常に気づきやすくなる。この記事では、ネジの緩みが温度に与える影響や、チェック方法、再発を防ぐためのポイントを詳しく解説していく。
CPUクーラーのネジが緩むと何が起きる?
CPUクーラーの役割は、CPUが発する熱を効率よくヒートシンクやファンに伝えて冷ますことだ。
このとき、CPUとクーラーの間に隙間があってはいけない。
金属同士を密着させ、熱伝導グリスを挟むことで熱をスムーズに移動させる仕組みになっている。ところが、ネジが緩んで固定が甘くなると、この密着が保てなくなる。
ネジがゆるんだ状態では、クーラーとCPUの接触が部分的になり、その隙間に空気が入り込む。空気は熱を通しにくいため、冷却効率が急激に落ちる。
高性能なCPUほど発熱量が大きいため、少しの緩みでも温度は上がりやすくなる。結果として、アイドル時でも50度以上、負荷時には90度を超えるような高温になることもある。
こうした異常な温度になると、CPUは自ら性能を落とすことで熱を抑えようとする。これが「サーマルスロットリング」と呼ばれる現象だ。一見、アプリやOSの不調のように見えるが、実際にはCPUが自衛のためにクロック周波数を下げているだけだ。
この状態では本来の性能が出せず、ゲームや動画編集、プログラミングなどで明らかな遅延が起きる。
さらに悪化すると、PCが突然再起動したりフリーズしたりすることもある。冷却が追いつかないまま高温が続くと、マザーボードや周辺部品にも影響が出る可能性があるため、放置は禁物だ。
ネジの緩みは目に見えにくいが、深刻なトラブルの原因になり得る。定期的なチェックと、温度モニタリングによる早期発見が重要になる。
大型クーラーは要注意!傾きと緩みによるリスク
最近のハイエンドCPUに対応する空冷クーラーは、ヒートシンクやファンが大きく、全体で1kgを超えるモデルも珍しくない。こうした大型クーラーは冷却性能が高い一方で、重量によるトラブルも起きやすい。
注意が必要なのが、マザーボードに取り付けたままPCを運んだときや、長期間にわたって同じ向きで使い続けた場合だ。
重量があると、ネジやマウント部分にかかる力が偏りやすくなる。ネジが徐々に緩んでクーラーが傾き、CPUとの接触が不均一になることがある。クーラーの一部が浮いてしまえば、そこに隙間ができて冷却効率が下がる。
たとえグリスが塗られていても、均一に圧力がかかっていなければ意味がない。熱が一方向にしか逃げないため、CPUの片側だけが高温になることもある。
また、取り付け作業時にクーラーがわずかでも斜めになっていると、初期からこの問題が発生してしまう。大型クーラーは装着中に重みで傾きやすいため、ネジを交互に少しずつ締めながらバランスを取るのが基本だ。片側だけを一気に締めると、反対側が浮いたままになり、固定が不十分になる。
取り付け後に軽く手で揺らしてみて、ガタつきがないか確認するのも効果的だ。不安定なまま使い続けると、最悪の場合、マザーボードのソケットに無理な力がかかって破損することもある。クーラーは冷却性能だけでなく、物理的な安定性も含めて、正しく取り付けることが重要だ。
CPU温度をチェックする実践的な方法
CPUの温度は、見た目ではまったくわからない。だからこそ、普段から温度を数値で確認できるようにしておくことが大切だ。
高温になってから慌てるのではなく、「いつもより少し高いかも」と気づければ、ネジの緩みや冷却不良を早めに発見できる。
温度チェックには、OSごとに対応したツールを使うと便利だ。Windowsなら「HWMonitor」が定番で、CPUの温度や電圧、ファンの回転数まで一覧表示してくれる。インストールするだけですぐ使え、数値の変化もリアルタイムで確認できる。もう少し詳細な分析をしたいなら、「HWiNFO」もおすすめだ。
Linuxの場合は、「Psensor」というグラフィカルなツールがわかりやすい。バックグラウンドで温度を監視し、トレイアイコンで現在の温度を常に表示できる。コマンドライン派には「lm-sensors」が定番で、端末から以下のようにして導入・確認ができる。
sudo pacman -S lm_sensors
sudo sensors-detect
sensorsmacOSでは、App Storeで入手できる「Mac Fan Control」や「iStat Menus」が便利だ。CPUやGPUの温度、ファンの動作状況をメニューバーで手軽に確認できる。
大事なのは、平常時の温度を知っておくことだ。普段から温度を見ていれば、「最近少し高い」とすぐに異常に気づける。気温が高い夏場や長時間負荷をかけたときにどこまで温度が上がるかも把握しておくと、トラブルの予防につながる。
BIOSやUEFI画面でも起動直後の温度は確認できるが、それでは日常の監視には使いにくい。こうしたツールを使って、常時チェックできる仕組みを作っておくことが重要だ。温度の異常はパフォーマンス低下のサイン。こまめに確認し、少しでも違和感を感じたら、クーラーの取り付け状態を疑ってみよう。
気温やPC環境によっても温度は変化する
CPUの温度は、PC単体の問題だけで決まるわけではない。外気温や設置環境、PCケースのエアフローなど、周囲の条件によって大きく変わる。
夏場は室温が高くなりやすいため、どれだけ冷却性能の高いクーラーを使っていても、内部にこもる熱を逃がしきれないことがある。
PCケース内の通気性も重要だ。吸気ファンと排気ファンのバランスが悪いと、空気がうまく流れず、熱がケース内に滞留してしまう。ホコリがフィルターやヒートシンクに溜まっていると、冷却効果はさらに落ちる。
エアフローを意識したファンの配置や、定期的な掃除も欠かせない。
設置場所にも注意したい。壁際や棚の中に密閉して設置していると、排熱がこもりやすくなる。床に直置きしていると、吸気口からホコリを吸い込みやすくなる点も見逃せない。温度が高めのときは、冷却部品だけでなくPC周辺の環境にも目を向けてみよう。
適切な通気と清掃で、思った以上に温度が下がることもある。
高温時の対処法とクーラーの再チェック手順
CPUの温度が明らかに高いと感じたら、まずはネジの緩みを疑おう。パソコンの電源を切り、コンセントを抜いてからケースを開ける。CPUクーラーの固定ネジを4本とも軽く押してみて、どれか1本でもグラつくようなら、緩んでいる証拠だ。
再固定するときは、ネジを対角線上に順番に少しずつ締めるのが基本。例えば、右上→左下→左上→右下という順で、力を均等にかけながら締めるとクーラーが傾きにくい。すべて締め終えたら、手で軽くクーラーを触って揺れがないか確認する。
もしネジの緩みがなかった場合や、長期間グリスを交換していないなら、一度クーラーを取り外してグリスを塗り直すのがおすすめだ。古いグリスを無水エタノールなどで丁寧に拭き取り、米粒程度の新しいグリスを中央に塗ってからクーラーを戻す。
以下は、自作PCユーザー向けの温度異常チェックリストだ。
- クーラーのネジに緩みがないか確認
- ヒートシンクにホコリが詰まっていないか
- グリスが乾燥・劣化していないか
- ケース内のエアフローは確保されているか
- ファンが正しく回転しているか
順番に見直すことで、温度上昇の原因を突き止めやすくなる。特別な道具がなくてもできる作業が多い。普段から温度をチェックしておくと安心だ。






