
Slackware は、Linux ディストリビューションの中でも最も伝統的でシンプルな設計思想を持つことで知られ、安定性と一貫性を重視した構成が特徴である。パッケージ管理には独自のパッケージ形式を採用し、自動依存関係解決を行わないため、ユーザー自身がシステム構成を深く理解しながら管理できる点が大きな魅力となっている。
設定ファイルは極力素の状態が保たれており、余計な抽象化を避けることでカスタマイズの自由度が高く、システム挙動を把握しやすい。さらに、安定性を最優先する方針からソフトウェア選定も慎重で、長期間にわたり信頼性の高い運用が可能である。
このように Slackware は、シンプルさ、制御性、そして堅牢性を求める上級ユーザーに最小限の自動化と最大限の自由度を提供している独自のディストリビューションとして根強い人気がある。
めんどくさい
上記のようにメリットだけを語れば、Slackwareは上辺だけの野球聖人のごとく優れているように見えるが実態はそう簡単ではない。
まずSlackwareは面倒すぎる。パッケージ管理は依存関係を自動で解決せず、必要なソフトを自分で探して確認し、手作業でインストールしなければならない。この作業は初心者にとってほぼ拷問または地獄であり、上級者でも時間と手間の消費が半端ではない。
多くのソフトウェアがプリインストールされている一方で、デスクトップ環境や各種ツールは最小限しか用意されていない。copyqやplank、fcitx5-mozcなど、普通のOSでは当然のように使えるものが、Slackwareではインストール不可能であったり、ファイル編集など専門知識を必要とする場合もある。GUIや便利機能を当たり前に使いたい者にとっては、ほとんど拷問だ。
システムのアップデートも他OSに比べて難易度が高く、sudo apt upgrade 的な軽いノリで実行したら起動不能になることも珍しくない。自動化や利便性を追求する現代のLinux環境から見れば、Slackwareは「時間を奪う重労働マシン」でしかない。
安定性と透明性の代償として要求される手間と面倒さは尋常ではない。何もしなければ安定動作するが、便利に使おうとすれば労力は膨大である。面倒な作業を楽しめる変態でなければ、わざわざ選んでも辛いだけだろう。
Slackware はLinuxの学習によい
Slackware が Linux の学習によいとされているのは、その設計思想がシンプルでありながら、ユーザーにシステム内部を理解させる構造になっているためである。
依存関係解決を含む多くの作業は自動で解決されず、手動で行う。ユーザーは拷問のような作業を通じて必然的に Linux の仕組みやパッケージ構成、設定ファイルの役割に精通していくことになる。
Slackware は設定ファイルを隠蔽せず、そのまま編集させるスタイルを採用しており、ネットワーク設定やサービス管理なども実際の構成ファイルを通じて直接理解できる点が学習によい。過度な独自機能を追加せず標準的な UNIX の流儀に忠実であるため、他のディストリビューションや UNIX 系 OS にも応用が利く知識を身につけやすい。
こうした理由から、Slackware は Linux を深く理解し、基礎から確実に学びたい人にとって最適な学習環境とされているのだ。
Slackware、Debian、ArchLinux の違い
Slackware、Debian、ArchLinux はそれぞれ完全に性格が異なり、向き不向きも極端である。選ぶ際は「自分がどれだけ手間を許容できるか」がすべてである。
Slackware
Slackware は「面倒」である。依存関係は自動で解決されず、必要なソフトは自分で探して手作業でインストールしなければならない。便利機能や最新ソフトを使うには設定やコンパイルの知識が必須で、初心者どころか中級者でも苦労する。依存関係の自動解決がなく、パッケージ選択や設定を誤ると、自分の手でシステムを壊すことになる。壊れるのは基本的に自分の操作が原因である。安定性や制御を手に入れる代わりに、膨大な手間を引き受ける覚悟がない限り、Slackware は辛すぎる。
Debian
Debian は「無難」である。APT による依存関係管理、豊富なリポジトリ、長期サポートにより、ほぼ何も考えずに安定したシステムを構築できる。サーバ用途でもデスクトップ用途でも失敗しにくく、面倒を避けたい者には最適だ。しかし、最新ソフトや最先端の機能は後回しになるため、刺激や自由度はほとんどない。要するに「安全だけど退屈」な選択肢である。
Arch Linux
Arch Linux は「自己責任」である。ローリングリリースにより常に最新ソフトが使えるが、システム構築やトラブルシュートはすべて自己解決が前提。自由度は高いが、手間やリスクも比例して高い。設定や依存関係の問題で簡単にシステムが壊れることもあり、初心者には地雷。Pacman によってシステムが自動で更新されて手軽だが、依存関係の変更や大きなアップデートで突然起動不能になることもある。自分が操作していなくても、システムが勝手に危険に晒されるリスクがある。自由と最新性を求める上級者向けである。
| Arch Linux | 自動最新、自由度高い、自己責任、手間とリスクが大きい |
| Debian | 無難で安定、初心者にも扱いやすい、つまらないが安全 |
| Slackware | 安定・面倒、制御可能だが手間が膨大、初心者は苦行 |
Slackware には 手動で壊すリスクがあり、Arch には 自動で壊れるリスクがある。Slackware は「面倒すぎる上級者向け」、Debian は「無難で安全な選択」、Arch Linux は「自己責任で挑む自由度の高い選択」である。
おすすめの人は
Slackware が向いているのは、Linux を本気で理解したい、あるいはシステムを自分で完全にコントロールしたいという覚悟のあるユーザーである。便利さや自動化を期待する者には不向きであり、インストールや設定、依存関係管理のすべてを自分の手で行う必要があるため、初心者や手軽さ重視のユーザーには地獄でしかない。
逆に、自分で設定ファイルを編集し、UNIX 的な管理方法を身につけたい上級者やシステム管理者には格好の環境である。Slackware は余計な自動化や独自機能がほとんどなく、安定性とシンプルさを求める者には非常に魅力的だ。しかしその代償として、手間と面倒さは尋常ではない。
要するに、Slackware は「学ぶ意欲と忍耐力、トラブルシュートを楽しめる変わり者専用」のディストリビューションである。正直に言えば、便利さやすぐに使える環境を求める者には向かず、選ぶなら覚悟を持った上級者だけが満足できる世界である。
向いていない人
Slackware が向いていないのは、Linux をすぐに使い始めたい、便利さや自動化を重視するユーザーである。Slackware は依存関係の解決や設定のほとんどを手作業で行う必要があるため、操作に時間をかけたくない者や、結果だけを求める者には耐えがたい。
GUI 設定ツールに慣れているユーザーにとっても、Slackware の極端にシンプルな構成は逆に扱いにくく、面倒さばかりが目立つ。トラブルが起きたときに自己解決できない初心者や、詳細な設定に興味がない人にとっては、学習コストは高く、ストレスの源になる。
Slackware は「手間やコマンド操作を避けたい人間には地獄の環境」であり、便利で即戦力の Linux を求める者には絶対に向かない。覚悟なく手を出すとイライラと時間の浪費しか残らないディストリビューションである。
15.0 と Current
Slackware の安定版(Stable)は現在 15.0 で、2022年2月にリリースされている。正直に言えば、リリース間隔は長く、前バージョン 14.2 から 15.0 への移行には数年を要した。とはいえ、セキュリティ対応や修正は継続して行われており、15.0 は未だサポート中である。老舗ディストリビューションとしての安定性と信頼性は高いが、便利さやモダンさはない。
一方、Current は、次期安定版に向けた開発ブランチであり、ほぼ日次で更新されるローリングリリース的な運用が特徴だ。最新のカーネルやアプリケーションをいち早く試すことができる反面、依存関係や構成の大きな変更が頻繁に起こるため、本番環境や安定性重視のシステムにはほとんど推奨されない。安定版 15.0 と -Current では設定方法や挙動が異なる点も多く、情報が少ないため、初心者にはさらに敷居が高い。
-Current を利用する場合は、まず安定版をインストールした上で /etc/slackpkg/mirrors を current 用に切り替え、slackpkg update → slackpkg upgrade を定期的に実行するのが一般的である。ChangeLog も頻繁に更新されるため、どのパッケージが変更されたのかを逐一確認し、自分で管理できる覚悟が要る。
インストール
Calamares のような GUI インストーラは存在しない。だが、ArchLinux(手動)や Gentoo のように極端に難しいわけではない。Debianと同レベルで十分に進められるレベルだ。
まず公式サイトから ISO イメージを取得する。はじめから -Current を使う場合は、Currentの最新版 ISO を取得するのがおすすめ。USB メディアなどに書き込み、そこから起動してインストールを開始する。
ブートするとテキストベースのインストーラが立ち上がり、その後、setup コマンドを実行してインストールメニューに入る。パーティション作成には cfdisk や fdisk を使い、ルートパーティションやスワップ領域を自分で設定する。ここが一番難しい箇所になるだろう。
対象パーティションの選択、パッケージセットの指定、ブートローダの設定を順に進める。Slackware は依存関係の自動解決を行わないため、必要なライブラリやツールを確実に揃えるには、ソフトウェアを減らさずデフォルトでインストールするのが安全である。他のOS同様に最小インストールを行うと、後で依存関係不足に悩まされ痛い目を見ることになる。
インストール完了後は、まず root でグラフィカル環境にログインし、通常ユーザーのアカウントとパスワードを設定。その後、一度 root からログアウトし、作成した通常ユーザーで再度グラフィカル環境にログインして使用を開始する。あとは /etc/ 以下の設定ファイルを編集し、ネットワークやサービスを整えていく。Linux の仕組みを学びながら環境を構築できる。



