
SlackwareはLinuxディストリビューションの中でも、とりわけ厳しい存在として知られている。親切な自動化や分かりやすいGUIに慣れた利用者が軽い気持ちで手を出すと、開始直後から容赦なく現実を突きつけられる。「使えば何とかなる」OSではない。本記事では、そのキツさを正直かつ辛口に整理していく。
インストーラが時代遅れ
Slackwareのインストーラが時代遅れであることは、初心者にとって最初の強烈な壁となる。起動直後から表示されるのはncursesベースの素っ気ない画面であり、マウス操作やGUIによる誘導は一切存在しない。各選択肢に丁寧な説明はほぼなく、「何を基準に選べばよいのか」は暗黙知として放置されている。
結果として、初心者は意味の分からない選択を連発し、不安と混乱の中で作業を進めることになるのである。だがこれはDebianインストールに毛が生えたレベルの難度でありまだ序の口だ。
依存関係を一切見てくれない
Slackwareはパッケージの依存関係を原則として管理しない。初心者どころか中級者にとても厳しい。必要なソフトウェアを一つ導入しただけで、背後に存在する複数のライブラリ不足が一斉に露呈し、即座にエラーとして突き返される。
パッケージ管理は完全な自己責任であり、「何が足りないのか」「どこから入手すべきか」を自力で調査し解決しなければならない。この過程はトライアンドエラーの連続で、知識がなければ延々と同じ場所を彷徨うことになる。効率的な運用よりも理解を強制する設計思想が、初心者の心を容赦なく削るのである。
apt / dnf / pacman に慣れてると即死
aptやdnf、pacmanといった近代的なパッケージ管理に慣れた利用者がSlackwareに触れると、その落差に即座に打ちのめされる。slackpkgという公式ツールは存在するものの、依存関係を自動で解決し、環境全体を整えてくれる存在ではない。インストール後に不足が発生するのは日常茶飯事であり、「入れれば動く」という期待はあっさり裏切られる。
Slackwareおいて、パッケージ管理に万能さを求めること自体が誤りである。ユーザー自身が構成を把握し、整合性を保つ覚悟が要る。自動化というゆとり教育で甘やかされた温室育ちがここで退場していく。
検索しても情報が少ない&古い
Slackwareに関する情報は、検索しても量が少ない。しかも古いものが目立つ。日本語の情報は極端に乏しく、ようやく見つけた解説記事が2012年なんてのがザラ。仕様変更により、そのままでは通用しない内容も多く、参考にした結果さらなる混乱を招くことすらある。
現行環境に即した答えは自力で英語文献や公式ドキュメントを漁るしかなく、調査コストは非常に高い。情報の希少性そのものが、Slackwareを敷居の高い存在にしているのだ。
自動化・親切設計とは真逆
Slackwareの設計思想は、自動化や親切設計とは正反対の位置にある。「ユーザーがすべてを理解した上で設定すべき」という哲学が貫かれており、面倒な作業を肩代わりしてくれる仕組みはほとんど存在しない。設定ファイルは自分で読み、編集し、結果に責任を持つことが前提である。
そのため初心者の目には、知識と忍耐を鍛えるための修行僧向けOSにしか映らない。便利さを期待して触れると失望しか残らず、覚悟を持たない者ほど早々に脱落する構造になっている。
GUIが動かない理由を自分で特定しろと言われる
SlackwareではGUIが動かない場合、その原因を自分で特定することが当然の前提として突きつけられる。XorgやWayland、各種ドライバの組み合わせは複雑で、どこで問題が起きているのかは簡単には分からない。
表示されるエラーメッセージは英語で、しかも基礎知識を持っていることを前提とした内容であるため、初心者には暗号のようにしか見えない。対話的に修復してくれる仕組みはなく、ログを読み、仮説を立て、検証を繰り返すしかない。この過程は学習というよりも試行錯誤の耐久戦であり、精神的な消耗は避けられないのである。
公式ドキュメントが不親切
Slackwareの公式ドキュメントは、内容自体に誤りは少ないものの、初心者に対して決して親切とは言えない。手順や設定例は淡々と列挙されるだけで、その背景や理由についての説明はほとんど省略されている。そのため、前提知識を持たない読者は文章の意図を汲み取れず、何を理解すべきなのか分からないまま読み進めることになる。
結公式文書でありながら実践的なガイドとしては機能しにくい。「分かる人向けにしか書いていない」という印象を強く与え、初心者や中級者は容赦なく置き去りにされるのだ。
ディストリビューション側が何も守ってくれない
Slackwareはディストリビューション側が利用者を保護するという発想を持たない。設定や更新で環境を壊せば、それは完全に自己責任であり、簡単に元へ戻す手段は用意されていない。ロールバックやスナップショットといった近年、当たり前になりつつある安全装置など標準では存在していない。失敗すれば「インストールからやりなおし」が当然の選択肢となる。
この姿勢は自由度の高さとも言えるが、初心者にとってはガードレールのない崖の上を歩かされているようなもの。保護されることに慣れた利用者ほど、その冷酷さに戸惑う。
学習コストの割に実利が少ない
Slackwareは学習コストが非常に高いにもかかわらず、実利の面では必ずしも報われるとは限らない。設定や運用を通じて得られる知識は確かに深いが、その多くはSlackware特有の流儀に依存しており、他のディストリビューションでそのまま活用できるとは限らない。
膨大な時間を費やして習得した経験が、別環境では直接的な強みにならないことも多い。実務的な効率や汎用性を求める利用者にとっては、投下した労力に見合う成果を感じにくいのである。趣味や思想、修行として向き合う覚悟がなければ、徒労感だけが残る可能性が高い。
まとめ
ここまで挙げたように、Slackwareは厳しい。初心者が選ぶと、心が折れるか変態になるかのどちらかだ。効率や親切さとはかけ離れたディストリビューションであることは否定できない。
それにもかかわらず、今なおSlackwareを選び続ける人々が存在する。そこには、自動化に隠されない挙動の分かりやすさ、余計なことをしない素直な構成、「自分の手で理解し、制御している」という強い実感があるからだ。便利さと引き換えに失ったものを取り戻したい者にSlackwareは唯一無二の選択肢となり得る。




