CPUやメモリ、グラフィックボードなどのPCパーツは、すべてマザーボードに取り付けて使用する。マザーボードは、これらのパーツを効率よく連携させる「頭脳」的な役割を果たしている。
マザーボードの主な構成部品としては、CPUソケット、メモリスロット、PCIeスロット、SATAコネクタ、USBポートなどがある。AMD製とIntel製のCPUでソケットが異なるほか、メモリの種類や世代、拡張スロットの種類や数にも違いがある。
代表的なマザーボードメーカーとして、ASUSやMSI、GIGABYTE、ASRockなどがある。高耐久性をうたうサーバー向けから、ゲーマーやクリエイター向けの高性能モデルまで、用途に特化した様々な製品がそろっている。
部品の品質や搭載機能を比較し、自分のニーズに合ったマザーボードを選べるようにしていこう。
チップセット
パーツ間のデータ転送を制御するのがチップセットだ。CPUと同様にintelとAMDの2社がチップセットを提供している。
CPUの世代によって対応するチップセットが異なる。そのためCPU選びの際、同時にマザーボードも選ぶ必要がある。チップセットとCPUの互換性がなければ、CPU自体を搭載できない。
後にCPUやマザーボードのどちらかを交換しようとしても、中古品以外残っていないことが多く難しい場合がある。
intelのチップセットはZ、H、Bの3つのアルファベットに加え、2桁または3桁の数値が付いている。
一方、AMDのチップセットは、X、A、Bのアルファベットに続き、3桁の数値が書かれている。
マザーボードに搭載されている各パーツ
マザーボードには、CPUやメモリ、ストレージ、グラフィックスカード等の各コンポーネントを接続するための様々なパーツが搭載されている。
主なパーツとその役割を見ていく。
VRM
VRM(Voltage Regulator Module)は、CPUやGPUなどに必要な電圧を供給し調整する電源回路のこと。
VRMはマザーボード上の主要なパーツの1つで、CPUソケットのすぐそばに配置されている。
VRMには電圧レギュレータ、コンデンサ、チョークコイルといった部品で構成されており、12Vの大電流をCPUが必要とする低い電圧に変換している。
VRMの設計はマザーボードの安定性やCPUのオーバークロックの限界に大きな影響を与える。VRMの回路数であるフェーズ数が多いほど、安定した電圧供給が可能になる。
メモリスロット
メモリを実装する部分。ATXマザーボードでは普通、4枚のメモリを搭載できるスロットが用意されている。
一方で省スペースを重視したMini ITXマザーボードは、2枚のメモリスロットしかないものが多い。
メモリの枚数によって、装着するスロットの位置が指定されている場合がある。マニュアルで装着順序と配置を確認する必要がある。2枚の場合は2スロット、4枚の場合は色々なパターンがあるので注意だ。
CPUソケット
CPUソケットとは、マザーボード上のCPUを実装するための接続口のこと。CPUのピンと電気的に接続し、電力供給やデータ転送を可能にする。
CPUソケットには長年IntelCPUで使われてきたLGAソケットと、AMD CPUで使われるPGAソケットの2種類がある。IntelのLGAはマザーボード側にピンがあるのに対し、AMD PGAはCPU側にピンが付いている。
CPUの世代やプロセスルールの違いによって、ピン数やソケットの物理的な規格が異なる。そのため、CPUとマザーボードの互換性は確実にチェックする必要がある。最新CPUに対応できない旧世代のマザーボードも多数存在している。
M.2スロット
M.2スロットは、M.2規格のSSDやWiFi/Bluetoothモジュールを実装するインターフェイスのことを指す。省スペースで、高速データ転送が可能な次世代ストレージ接続のためのスロットだ。
M.2 SSDにはSATAベースとPCIeベースの2種類があり、データ転送速度の点ではPCIeのほうが高速だ。
マザーボード上のM.2スロットの位置や向きはさまざまで、CPUソケットの近くやスロットの間、マザーの背面など複数の場所に設けられていることがある。スロットの種類とM.2 SSDの互換性も確認しておこう。
拡張スロット
拡張スロットとは、グラフィックボードやサウンドカード、ネットワークカードなどの拡張カードを増設するためのスロットのこと。
代表的なのがPCI Express(PCIe)スロットで、複数レーンの高速シリアル転送が可能。ビデオカードに多用されており、通常16レーンのx16スロットがGPU専用に1つ用意されている。
そのほかにストレージや各種インターフェイスカード用に、x1やx4、x8のx1スロットが数個用意されているのが典型的な構成だ。拡張性を重視するユーザーなら、このスロットの数を確認したいところだ。
チップセット
SSDやHDDを装着するためのスロット。
パーツ購入時にはSATAケーブルがついている場合がある。足りない場合には別途購入する必要がある。
チップセットは、CPUとマザーボード上の各種デバイスを接続する役割を担う集積回路で、データの転送や入出力を制御している。
IntelプラットフォームではチップセットにSouthbridgeと呼ばれるハブ機能が統合されており、AMDでいうPromontoryチップがこれに相当する。
チップセットはCPUソケットのそばに配置され、PCIeレーン、SATA/USBポート、各種インターフェイスを CPU と他のデバイスに接続している。
使用するCPUに合わせたチップセットを選択する必要があり、世代が異なると互換性がなくなる場合がある。性能面ではオーバークロック時の安定性に影響する。
Serial ATA3.0スロット
シリアルATA(Serial ATA)はストレージデバイスを接続するためのインターフェイス規格。データ転送用のシリアル信号ラインと電源ラインで構成される。
最新世代となるSATA 3.0は転送速度が6Gbpsと以前のSATA 2.0 (3Gbps) から大幅に向上し、SSDをはじめ多くのストレージで採用されるようになった。
マザーボード上のSATA 3.0コネクター数は4~8個程度が一般的で、搭載数が多ければ多いほどストレージ拡張が容易だ。M.2以外でSSDやHDDを増設できるため、必要枚数を考慮したいポイントである。
Intel製チップセット
CPUと各パーツ間のデータ転送を制御する役割を果たしているのが、Intel製CPUであればIntel製チップセットだ。
Intel CPUを利用する場合、マザーボード上に同じIntelのチップセットが実装されている必要がある。
チップセットとCPUは発売時期が近いことが多く、後から一方だけを買い換えると互換性がなくなりやすい傾向がある。
2023年現在、最新のIntel CPUに対応するZ790、H770、B760といった700番台のチップセットが発売されている。CPUの選択と合わせて、対応するチップセットを搭載したマザーボードも選ぶ必要がある。
オーバークロックするならCPUは「K」つきのものを購入し、Zシリーズのチップセットを選択することになる。
Intel製チップセットは、オーバークロック対応の有無などによってZ、H、Bの3つに分類されます。
Zシリーズはオーバークロックに対応したハイエンドモデル。CPUは「K」つきのアンロック版を用意し、Zチップセットのマザーボードを組み合わせるのが一般的。
Hシリーズは標準的なビジネス向けモデルで、オーバークロックはできませんが安定稼働を目的としている。
Bシリーズに関してはモデルによる違いが大きく、エントリーモデルからオーバークロック対応の上位モデルまでそろっている。
AMDのチップセットの選び方
AMD CPUを使う場合、チップセットもAMD製にする必要がある。
AMDの全CPUと全チップセットが互換性ある訳ではなく、事前の調査が大切になる。
多くのRyzenプロセッサー対応マザーボードはSocket AM4を採用している。
PCI Express 4.0など最新の機能をフルに利用するには、X670チップセットとRyzen 3000シリーズ以降のCPUを組み合わせる必要がある。
2023年現在、AMDの次世代CPUであるRyzen 7000シリーズには、新しいSocket AM5プラットフォームが登場した。AM5はDDR5メモリとPCIe 5.0に対応するなど、性能面で大きな進歩を遂げているのが特色で、旧世代のRyzenとは互換性がない。
比較項目 | Socket AM4 | Socket AM5 |
---|---|---|
対応CPU | Ryzen 2000~5000シリーズ | Ryzen 7000シリーズ |
マザーボードチップセット | X570、B550、A520等 | X670E、X670、B650 |
メモリ規格 | DDR4 | DDR5 |
PCIeバージョン | PCIe 4.0まで | PCIe 5.0まで |
電力制御技術 | cTDP | PPT/TDC/EDC |
オーバークロック余地大 | △ | ◎ |
古い300番台チップセットでRyzen 3000を利用するケースでは、BIOSのアップデートを行う等の対応が必要になる場合がある。
規格を決定する
マザーボードには、本体の大きさや形状、搭載部品のレイアウトがある程度標準化された規格が存在し、フォームファクタと呼ばれる。
主要なフォームファクタには、大型PC (ATX) 向けのATXと、小型PC向けのMicroATXやMini-ITXがある。用途と設置スペースに応じて、こうしたフォームファクタを考慮する必要がある。
ATXは拡張スロットを多く搭載できる反面、サイズが大きくなります。Mini-ITXは省スペースでコンパクトなものの、搭載部品の数や大きさの制限を大きく受けるため、パーツ選択には細心の注意を要する。
ATX | 約24cm×約30cm |
microATX | 約24cm×約24cm |
Mini ITX | 約17cm×約17cm |
ATXフォームファクタは長方形で、最も一般的な規格で、拡張性に優れる。
microATXはATXを小型化した正方形サイズで、コンパクト性を優先している。
Mini-ITXはmicroATXより一回り小さな正方形で、小型PCやHTPCに適している。
ATXケースであれば、microATXやMini-ITXのマザーボードを装着可能ですが、逆に大きなATXを小さいケースには入れられない。
設置場所の制約や必要な大きさを考慮し、フォームファクタを決定する必要がある。大きさを決めずにマザーボードを購入すると、ケース選びで制限を受けることになる。
マザーボードメーカー
主要なマザーボードメーカーはASUS、MSI、GIGABYTE、ASRockの4社だ。
ASUSは全般的にバランスが良く、MSIはゲーミングを意識した製品が豊富。ASRockには少しクセのある個性的な製品もあるが、この4社を選べば基本的に間違いない。
それぞれのメーカーがIntel/AMDの各チップセットを採用し、同一チップセットでも様々なラインナップを揃えているため選ぶのも一苦労だ。
スタンダードモデルに加え、ゲーマーやクリエイター向けのハイエンドモデル等、用途別のグレード分けもされている。ゲーミングモデルは高負荷・オーバークロック時の安定性を重視したチューニングが施されている分、価格も高めです。
M.2 SSD/USB-C/WiFi
マザーボード選びのポイントとして、M.2 SSDの搭載数、USB-Cや最新規格USBの有無、内蔵WiFiの有無も確認したいところだ。
M.2 SSDは従来のSATA SSDより高速なので、搭載スロットがあるマザーボードを選びたい。M.2スロットがなければ利用できない。
スマホとの接続を考えUSB C端子があると便利だ。USB 3.1などの高速インターフェイスも同様だ。
WiFi 6やWiFi 6E対応の内蔵無線LANを搭載したモデルも増えてきており、別途WiFiアダプタが不要になるメリットがある。
こうした最新インターフェイス・拡張性を考慮することで、マザーボード選びの後悔を減らすことができるだろう。