Artix Linuxの最新版がリリースされていた模様。
https://artixlinux.org/download.php
Arch Linuxはsystemdへの依存を一段と強めている。それに対して「initシステムを選択する自由」を掲げ、systemdを排除したArch系ディストリビューションがArtix Linuxだ。
Void Linuxばかり使用してArtixを放置していた筆者だが、案の定、前年版Artixアップデートに失敗した。新年度という区切りの良いタイミングで最新版が登場したため、ピカピカの1年生の気持ちでArtix Linux-KDE-s6の新規インストールを試みた。
修正
2026年版は以下の2点が修正されていた。
- アップデートエラーの解消
以前はインストール完了直後、最初のパッケージ更新(pacman -Syu)が失敗していた。これが原因で挫折するユーザーもいたはずだが、2026年版では修正され、スムーズに最新状態へ更新できる。 - 音量設定の初期値
「音が出ない」と思ったら、単にデフォルトでミュート(消音)設定になっていたというくだらないバグがあった。現在は最初から適切な音量で出力される。起動後にミュートを解除する手間がなくなった。
Artix Linuxとは
Artix Linuxは「systemdを採用しないArch Linux」だ。
Arch Linuxは開発の効率化のためにsystemdへの依存を強めているが、これに反対する有志によってArtixは誕生した。シンプルで透明性の高いシステムを好む層から支持されており、世界的なシェア指標であるDistroWatchでもユーザーからの高評価を得ている。
このディストリビューションの最大の特徴は、以下の2点に集約される。
- initシステムの選択権
システムの起動やサービスの管理を担う「init」を自分の好みで選べる。今回は高速なs6を選択したが、他にもrunitやOpenRC、dinitといった選択肢が用意されている。 - Archの資産を継承
中身はArch Linuxがベースであるため、軽量かつ最新のパッケージが手に入る。Archユーザーなら困らないはずだ。
使用上の注意
Artix LinuxでArch Linuxのリポジトリは一応使えるが注意がある。
Artixはsystemdを排除しているため、単にArchのミラーを追加するとシステムが壊れるリスクがある。そこでArchのリポジトリを安全に利用するためのパッケージを以下のコマンドで導入する。これで、Archのリポジトリ(extraなど)を利用するための署名キーや設定が導入できる。
sudo pacman -S artix-archlinux-support
/etc/pacman.conf の末尾に、以下のようにArchのリポジトリを追加する。
## Artixのリポジトリ(既存)
[system]
Include = /etc/pacman.d/mirrorlist
… (中略)
## Archのリポジトリ(追記分)
[extra]
Include = /etc/pacman.d/mirrorlist-arch
Archの [ core ]リポジトリは追加してはいけない。[ core ] にはカーネルやベースシステムなどsystemdと密接な最重要パッケージが含まれているため、Artixのシステムと真っ向から衝突してしまう。
Artixが提供している [ system] [ world ] [ galaxy ] リポジトリで足りるが、どうしてもArch本家の最新パッケージが必要なら、Artix専用リポジトリで足りないものを上記の手順で補うと良い。
選べるInitシステム
Artix Linuxの核心は、インストール時にInitシステム(初期化システム)を自分で選べる点にある。標準的なディストリビューションでは不可能な「OSの心臓部」の選択が、ここでは当たり前に行える。
主要な選択肢は以下の通りだ。
- s6:高い信頼性と、プロセスの監視・再起動に優れたモダンなシステム。
- runit:非常にシンプルで起動が速い。Void Linuxなどでも採用されている。
- OpenRC:Gentoo Linuxで長年使われてきた実績のあるシステム。
- dinit:比較的新しく、依存関係の処理を高速に行う。
引き換えに覚悟すべき点がある。世の中のLinux向け技術情報のほとんどは「systemd」を前提に書かれている。
例えば、サービスの起動コマンド一つとっても、一般的な systemctl start などのコマンドは使えない。s6であれば s6-rc などの専用コマンドを覚える必要がある。Arch Wikiの知識がそのまま通用しない場面も多く、公式のArtix Wikiを読み解く力が必要だ。
GNOMEの公式廃止
Artix Linuxでは、主要なデスクトップ環境をインストーラーから選択できるが、以前と比べて大きな変化があった。
- GNOMEの非公式化
公式のラインナップからGNOMEが完全に外れた。GNOMEはシステム管理の仕組みをsystemdに強く依存させて開発が進んでいる。systemdを排除するArtixの設計思想とは相容れなくなり、公式サポートが困難になったのだろう。
選べるDE
GNOMEが廃止された一方で、Artix Linuxでは依然として多くのデスクトップ環境を公式にサポートしている。自分の好みの操作感に合わせて、インストール時に以下の環境から選択が可能だ。
- Plasma (KDE):高機能でカスタマイズ性が高く、現在のArtixにおいて最もモダンな選択肢。
- XFCE:軽量で安定しており、systemd非依存の環境では定番の構成。
- MATE / Cinnamon:伝統的なデスクトップの操作感を好むユーザー向け。
- LXDE / LXQt:極限までリソース消費を抑えたい古いPCや軽量マシン向け。
インストール手順
Artix LinuxはグラフィカルインストーラーCalamaresを採用。玄人向きと言われる割にはインストールが容易だ。
画面の指示に従ってクリックを進めるだけで完了するが、日本への塩対応は相変わらずだ。
- インストールは「英語」を選択
インストーラーのライブ環境には日本語フォントが同梱されていない。最初から日本語を選択すると、文字が豆腐になり内容が判別できず操作不能に。 - OS起動後に日本語化する
まずは英語でインストールを完了させ、インストールした後のデスクトップ環境で日本語設定するのが確実だ。
USBメモリにフォントファイル(.ttf や .otf)を入れておいてインストール後ににファイルをクリックするなりしてフォント導入も可能。fcitx5などの日本語入力も可能だ。
「あとで日本語化する」という手間があるくらいで、2026年版インストールは従来より簡単になった。「Archを使いたいがsystemdは嫌」というニッチな需要に対しArtixは最適解だ。2026年版は初期バグが減り、実用ツールとしての安定感が増している。
Artix LinuxなどのOSは、環境構築や検証を繰り返すことがある。その過程で「USB足りない」「データ退避したい」といった問題はほぼ確実に発生する。このような周辺環境を揃えておくと、無駄なストレスを減らせるのでおすすめだ。



