
朝起きて水を飲みたくて水栓のレバーを上げたら、レバーがボキッと折れた。
レバーがないので水もお湯も出ない。料理をするときも洗い物をするときも水が出ないと何も進まない。生活の中で水がどれほど欠かせないかを思い知らされた。
この水栓は20年以上前に取り付けたものらしい。長く使ったせいか、外観もくすみ、内部の部品もすり減っていた。メーカーの名前も型番を示すシールもすっかり消えている。修理を頼もうにも部品が手に入らない。誰がどう工事したのかも何も知らない。
どうすればいいのか
古い水栓を眺めながら、もう寿命だと感じた。レバーの交換を考えたが、応急処置をしてもすぐにまた不具合が出るだろう。毎日のように水を使う場所だから交換するしかないと考えた。
確かに20年も持ったのだからもう十分だ。そう考えると、新しい水栓に替えるのが自然に思えた。この時点で、「水栓」や「レバー」などという言葉さえ知らなかった。
次に考えたのは、どのメーカーのどんな水栓にするかということだった。せっかく替えるなら長持ちして、取り付けもしやすい製品を選びたい。使いやすさやメンテナンスのしやすさも大事だと感じた。
水栓が壊れて初めて、普段当たり前のように使っていた便利さに気づいた。蛇口をひねればすぐに水が出るという当たり前の仕組みは、見えないところで支えられていたのだと実感した。
古い水栓の取り外しに大苦戦
まず問題になりそうだと感じたのが、水栓の付け根にあるナットだった。位置が悪く、工具を差し込んでも角度が合わずに手が届かない。どうなっているのかを分析するため、スマホを差し込み撮影した結果、黒いナットで締めてあることが判明した。狭すぎてスパナやモンキーレンチが入らない。入っても斜めで大きさが微妙に違うのか力が入らずくるくる空回りだ。
シンク下に潜り込んで体をねじり仰向けになったりして作業しても、力が入らない。狭い空間で何度も体勢を変えるたびに、腰や肩に疲労がたまり体が痛い。このような構造を考えた人は死刑になるべきだと感じた。
14のスパナでゆるく、12のスパナが入らないので対辺13mmとわかった。ノギスで調べたらやはり13mmだった。仕方がないので専用工具を購入して1週間待ち、使ってみると片手で容易に取れたがこれ以外のシーンでは使わないだろう。
次に立ちはだかったのは固着したネジだった。20年以上動かしていなかったせいで金属がかたく締まり込み、モンキーレンチをかけてもびくともしない。力任せに回そうとしても軋むだけで水道を破壊しかねない。無理やりはよくないので、一時諦め情報を収集した。
調査の結果、潤滑剤「ラスペネ」を試すことにした。ネジの根元に吹きかけてしばらく待つと、金属の隙間に液体が染み込んでいった。再びレンチを当てると、今度はわずかに動いた。カチリと音を立てて回り始めたときは、思わず声が出るほどの安堵感があった。
さらに苦労したのがホースの取り外しだった。経年劣化で硬くなり、ホースというより金属の棒のように固まっていた。引き抜こうにもびくともしないので、少しずつねじりながら強引に外した。あまりの作業のしづらさに工事した人を恨んだ。
ネジやナット、ホースといった一つひとつの部品を外すだけでも予想以上に手間がかかる。水栓を工事するなら、固着や劣化を前提にして、修理しやすい構造にしておくべきだ。終わってから振り返ってみると設置するより外すほうが困難をきわめた。
水栓自体の料金に加え、取り付けに数万円も業者は取るようで高いと感じたが、仕方のない金額だと実感した。できない人にはできない。
作業を支える必須工具とポイント
古い水栓を外すときに痛感したのは、工具の有無が作業の成否を分けるということだった。役立ったのがモンキーレンチである。サイズを調整できるので、ナットやボルトの太さが違っても一本で対応できた。
パイプレンチがなければ工事は失敗に終わっていた。固着した配管部分をがっちりつかめるので、力が逃げにくくなる。無理に回そうとして工具が外れると手を痛める危険があるが、手のながい専用レンチを使えば確実に力を伝えられる。いくら頑張ってもうんともすんともいわないのが、ほんの数秒でナットが緩み、専用工具の力強さを実感した。
ラスペネのような潤滑剤と組み合わせれば、固まった金属ナットも動き出す。
作業前に必ず行うべきなのが止水栓を閉める手順である。シンク下のハンドルを時計回りに回して水を止め、その後蛇口をひねって水が出ないか確認する。この確認を怠ると、外した瞬間に水が噴き出し、キッチン全体が水浸しになる。
また、作業中は体を支えるスペースを確保しておくことも大切だ。シンク下に潜り込むことが多いため、周囲の荷物を片付けが必須だ。寝そべる体勢になったので、背中に敷く不要な段ボールも役に立った。
工具は必要なものを事前に調べて用意しておく。取りやすい場所に並べておくと、無駄な動きが減って体への負担も少ない。
水栓交換は一見単純な作業に思えるが、実際には狭い空間で固着部品と格闘する作業である。正しい工具と事前準備があれば安全に進められると感じた。
TOTO-TKS05301を選んだ理由と特徴
数ある水栓の中から最終的に選んだのはTOTOの「TKS05301」である。信頼できるメーカーで、取り付けやすい水とお湯に対応したスタンダードなモデルだった。
20年以上前の古い水栓は、シンク下に潜り込んでナットを締める必要があり、体への負担が大きい。それに比べてTKS05301は上から固定できる構造になっており、狭い空間で苦労する作業を避けられる点が魅力だった。
型番が明記されているので、交換用として安心して選べるのもポイントである。古い水栓のときはメーカーや型番が不明で、修理部品の手配すら難しかった。その経験があったため、今度は確実に情報が残る製品を選びたいと考えた。youtubeでもTKS05301でDIYしている者がいるので情報も集めやすい。
吐水の切り替えやお湯と水の操作もスムーズで、レバーの動きが軽い。デザインもシンプルで、キッチンに自然に馴染み高級感がある。毎日使うものだからこそ、見た目の清潔感や操作の快適さは大切だと感じた。
TKS05301はAmazonでも在庫がありレビューを確認してから購入できるのも安心だった。自宅に届いてすぐに作業を始められる点も助かった。交換作業に不安を感じていたが、最新モデルの利便性が作業を大きく後押ししてくれた。
新しい水栓を取り付けてみた感想
TOTO-TKS05301を取り付けて最初に感じたのは、レバー操作の軽さだった。わずかな力で上下左右に動き、水もお湯もカチッと音がして切り替えがスムーズ。古い水栓は動きが重く水が漏れていたこともあったが、新しいものは動作が正確で不安がない。
吐水口から流れる水の勢いも安定している。以前の水栓は内部の部品が劣化していたせいか、水が散ったり弱まったりしていた。TKS05301に替えてからは均一に水が流れ、洗い物も効率よく進むようになった。お湯もすぐに切り替わるため、調理や掃除の動作が快適になった。
取り付け作業を終えたときの達成感は大きかった。固着したネジや硬いホースに苦労したが、最後にレバーを動かして「シャー」と水が出た瞬間、それまでの苦労が報われた気がした。自力で交換できた実感は、業者に頼んだのでは得られない。
普段は意識していなかった水栓のありがたみを改めて感じた。蛇口をひねればお手軽に水やお湯が出るという当たり前の仕組みは、実は緻密な構造に支えられている。新しい水栓を取り付けてからは、日常の動作が以前よりも快適になり、生活の質そのものが向上したと実感している。
DIYでの学びと今後の備え
今回の水栓交換を通じて、まず痛感したのは工具の大切さだった。モンキーレンチやパイプレンチ、潤滑剤などが手元にあるかどうかで作業の進み方が大きく変わる。専用の工具をそろえておけば、無理に力を入れてけがをする心配も減らせる。基本的な工具は一式そろえておくべきだと学んだ。
もう一つ大事だと感じたのは、製品の情報を残しておくことだ。古い水栓は型番が分からず、部品の調達すら困難だった。今後は取り付けた製品の型番や取扱説明書をきちんと保管し、確認できるようにしておくつもりである。記録があれば、修理や交換のときに迷わず対応できる。
作業手順を事前に理解しておくことも大切だ。止水栓を閉めて水が出ないことを確かめるなどの基本を守れば予想外のトラブルを避けられる。シンク下のスペースを片付け、工具を取りやすい位置に置くだけで作業効率も格段に上がる。
水栓の交換は大変ではあったが、終えてみれば生活に直結する学びを得られた。道具の準備や情報の管理といった小さな工夫が、作業の成否を分けると分かったからである。今回の経験は、今後のDIY全般にも役立つ確かな財産になった。




