
Arch LinuxをはじめとするArch系ディストリビューションは、最小限のシステム構成からユーザーが好みのソフトウェアを積み上げる独自の設計思想を持つ。この設計思想は多くの上級ユーザーやLinuxマニアから支持を集めている。
デスクトップ環境には標準でダークテーマが採用されていることがあり、目の疲れを軽減する効果がある。一方で、明るい環境下での作業やテキスト編集では白黒のコントラストが強すぎて目が疲れやすい。また、コーディングのような長時間の作業では、人によっては白地に黒文字の表示が読みやすく感じる。
ダークテーマから白背景のライトテーマへの移行したくても、[設定]の変更だけでは無理である。ライトテーマの一部にダークテーマが残り見た目が醜くなると、せっかく導入したArch linuxも使いたくなくなってしまう。そこで、この記事ではデスクトップ環境の外観統一方法を詳しく解説する。
Qt と GTK アプリケーションの外観の統合
https://wiki.archlinux.jp/index.php/Qt_%E3%81%A8_GTK_%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%A4%96%E8%A6%B3%E3%81%AE%E7%B5%B1%E5%90%882.
システム全体のテーマ設定
システム全体のテーマを変更するには、環境変数とデスクトップ環境の設定の両方を変更する。環境変数は/etc/environmentファイルに記述する。以下のような設定がされていることがある。
QT_QPA_PLATFORMTHEME=qt5ct
QT_STYLE_OVERRIDE=kvantum
GTK_THEME=Arc-dark
EDITOR=nano
BROWSER=firefox
この環境変数はQtアプリケーションとGTKアプリケーションの見た目を制御する。QT_QPA_PLATFORMTHEME はQtアプリケーションのテーマエンジンを指定し、QT_STYLE_OVERRIDE はKvantumテーママネージャーを使用するための設定になっている。GTK_THEMEはGTKアプリケーションのテーマを指定する。
ダークテーマからライトに変更したいなら、GTK_THEME=Arc-dark を GTK_THEME=Arc に変更する。
デスクトップ環境の設定では、まずシステム設定を開く。外観セクションから「グローバルテーマ」を選択する。ここにはライトテーマとダークテーマの選択肢が並ぶ。ライトテーマを選択すると、デスクトップ全体の配色が明るい色調に変更される。
テーマ変更の反映には一度ログアウトしてログインし直す。ログアウトせずにテーマを反映したいときは、以下のコマンドを実行する。
lookandfeeltool -a org.kde.breeze.desktop
ウィンドウの装飾や配色は「アプリケーションスタイル」から細かく調整できる。ウィンドウの装飾テーマ、配色スキーム、アイコンなどを個別に設定する。
デスクトップ効果も併せて設定すると見た目が洗練される。「デスクトップ効果」から半透明効果やアニメーションを調整する。ただし過度な視覚効果はシステムに負荷をかけるので、実用性を重視して設定する。
GTKテーマの設定
GTK(GIMP Tool Kit)はグラフィカルなユーザーインターフェースを構築するためのフレームワークだ。もともとGIMPイメージエディタ用に開発されたが、現在ではGNOMEデスクトップ環境の基盤として広く採用されている。GTKの特徴はウィジェットと呼ばれるUI部品の豊富さにある。
ボタン、メニュー、ウィンドウ装飾などの要素をCSSライクな文法で柔軟にカスタマイズできる。Firefox、GIMP、Inkscapeなど多くの人気アプリケーションがGTKを採用している。GTKはオープンソースソフトウェアの重要な構成要素として進化を続けている。
GTKアプリケーションのテーマ設定は~/.configディレクトリ以下の設定ファイルで管理する。GTK3とGTK4では設定ファイルの位置が異なるため、両方の設定が必要だ。
GTK3の設定は~/.config/gtk-3.0/settings.iniに記述する。
[Settings]
gtk-theme-name=Arc-dark
ライトテーマにしたいなら
[Settings]
gtk-theme-name=Arc
と変更する。
GTK4の設定は~/.config/gtk-4.0/settings.iniに同様の内容を記述する。
さまざま項目が並んでいるが、gtk-theme-nameを探す。
[Settings]
gtk-theme-name=Arc-dark
を
[Settings]
gtk-theme-name=Arc
GTK3同様に変更する。
設定ファイルを編集後、GTKアプリケーションを再起動するとテーマが反映される。デスクトップ環境全体に反映するにはログアウトして再ログインする。
各アプリケーションの個別設定は~/.config以下の設定ファイルで上書きできる。
Qtアプリケーションのテーマ設定:Kvantumマネージャーとは
KvantumはQtアプリケーションの外観を高度にカスタマイズできるテーマエンジンだ。SVGファイルベースのテーマ設定により、ボタン、メニュー、スクロールバーなどのUI要素を細かく制御する。Kvantumの優れた点は、GTKテーマに似た見た目を実現できる点にある。設定は専用のKvantumマネージャーから行い、テーマの選択やプレビュー、細かな調整が可能だ。
テーマファイルは.kvconfigと.svgで構成され、ユーザーは独自のテーマを作成することもできる。多くのLinuxデスクトップ環境で採用され、QtとGTKアプリケーションの見た目を統一するための重要ツールとなっているため、Kvantumマネージャーの設定もライトテーマ統一に必要だ。
KvantumマネージャーはQtアプリケーションの外観をカスタマイズするツールだ。ない場合、まずKvantumをインストールする。
sudo pacman -S kvantum-qt5 qt5ct

Kvantumマネージャーを起動すると、テーマ選択画面が表示される。左側のパネルにインストール済みのテーマ一覧が表示され、右側にプレビューが表示される。テーマを選択して[このテーマを変更]をクリックすると適用される。
Kvantumマネージャーを起動、[kvantum(標準)]テーマから[ KvArc ]などのライトテーマを選択し、[このテーマを変更] ボタンをクリックする。テーマが適用されると、Kvantumマネージャーが黒い背景から白い背景に変わり、ライトテーマへの切り替えが完了する。


Qtフレームワークの基本
Qt5の設定はqt5ctで行う。qt5ctを起動すると、アピアランス、フォント、アイコン、インターフェースなどの設定項目が表示される。スタイルドロップダウンから「kvantum」を選択すると、Kvantumで設定したテーマが適用される。
ライトテーマで統一したいなら、qt5設定で[ kvantum-dark ] になっていないかチェックする。


Qtは開発効率とアプリケーションの品質を両立するクロスプラットフォーム開発フレームワークだ。C++をベースにGUIアプリケーションを作成でき、Linux、Windows、macOSなど複数のOSで動作する。Qtの特徴は豊富なウィジェットライブラリと直感的なシグナル/スロットの仕組みにある。
KDE Plasma、VLC Media Player、Dolphinファイルマネージャーなど、多くの人気アプリケーションがQtで開発されている。テーマ設定はQt Style SheetsやKvantumマネージャーで制御でき、デスクトップ環境全体の見た目を統一できる。Qtはアプリケーション開発の標準ツールとして広く採用され、特にLinuxデスクトップ環境で重要な役割を果たしている。
Qt5の設定は~/.config/qt5ct/qt5ct.confに保存される。設定を反映するには環境変数QT_QPA_PLATFORMTHEMEを設定する。
KDEを使用しているなら、システム設定からもQtスタイルを設定できる。[色とテーマ]>[アプリケーションスタイル]からウィジェットスタイルを変更できる。ライトテーマで統一したいならダークテーマを選択しないようにする。
まとめ
一貫性のあるデスクトップ環境を実現するには、etc/environment、GTKとQt、kvuntum設定をチェックしよう。[設定]>[外観とスタイル]外観だけでは不十分だ。ダークからライトにもできるし逆も可能だ。
