マザーボードは、PC内の様々なパーツを接続する中心的なプラットフォームである。どのマザーボードを選択するかで、システムのパフォーマンスと安定性に大きく変わってくる。
そして、マザーボードの選択において最も重要になるのは、中心的なプロセッサの選択である。現在のデスクトップPC市場では、インテルとAMDが主要なメーカーであり、この2大メーカーしか実質的な選択肢はない。
インテルは長らく市場をリードしており、最新のマイクロアーキテクチャを採用した高速で強力なプロセッサを提供している。一方、AMDも注目すべきプロセッサ製品を投入しており、価格的にインテルとの差別化を図っている。
プロセッサの選択に基づき、互換性のあるマザーボードを選択する必要がある。インテルプロセッサならインテルチップセット、AMDプロセッサならAMDチップセットのマザーボードを選択する。
ソケットの種類
プロセッサとマザーボードのソケットの互換性は、システム構築における重要な考慮事項の1つである。
外観は同じでも、プロセッサは継続的に改良されており、特定のソケットにのみ装着可能である。マザーボードの選択は、使用するプロセッサで決まる。
例えば、Intel Core i5-6600K プロセッサはLGA1151ソケットを必要とし、Core i7-6800KのLGA2011ソケットとは互換性がなく取り付け不能だ。AMDでも同様に、AM1、AM3+、FM2、FM2+などのソケット仕様が存在する。
マザーボード選択時には、CPUのソケットとマザーボードのソケットが一致していることを確認する。Intel対応だからAMD対応だから、というわけにはいかない。ソケットの互換性を無視すると、高額な資金をドブに捨てることになりかねない。適切なCPUとマザーボードの組み合わせ選択は、自作パソコンの基本中の基本事項だ。
Intel チップセット
マザーボード選択において、Intelプロセッサを使用する場合、チップセットの選択は重要な次のステップとなる。
チップセットは、統合回路上の電子部品の集まりであり、異なるマザーボード機能の組み合わせを表している。チップセットの選択は、使用目的によって決める。
ゲーミングシステムには、オーバークロックやマルチGPUをサポートするZシリーズが適している。一方、Hシリーズチップセットは、オーバークロック機能がないかわりに、ビジネスや日常使用向けに安定性と信頼性が高められている。使用目的に応じて、適切なチップセットを選択することで、コストと性能のバランスの取れたマザーボードを構成できる。チップセットの機能差は、マザーボード選定の重要な判断材料となる。
- Zシリーズ
高性能デスクトップPC向け。オーバークロックに対応し、ゲーミングなどを重視するユーザー向け。最上位モデルは Z790で、最新の13th Gen Coreプロセッサ(Raptor Lake-S)に対応している。 - Bシリーズ
メインストリームデスクトップPC向け。ビジネス利用などを重視し、安定性と信頼性を提供。 - Hシリーズ
エントリーレベルのデスクトップPC向け。B660より拡張性が劣るが、コストパフォーマンスに優れる。 - Qシリーズ
組み込みや産業用途向け。耐久性と長期供給を重視する。 - Xシリーズ
ハイエンドデスクトップ向け。HEDT(High End DeskTop)プラットフォームに対応。
AMD チップセット
AMDの最新世代のCPU、Ryzenシリーズに対応する主なチップセットは以下の通りだ。
- X670
Ryzen 7000 シリーズCPU向けPCIe 5.0 に対応: GPUやSSDなどへの接続で、PCIe 5.0の高速インターフェイスをサポート。DDR5メモリに対応した最新チップセット。 - X570
ハイエンドチップセット。PCIe 4.0に対応し、高速インターフェースを実現。 - B550
メインストリーム向けチップセット。PCIe 3.0でコストを抑えつつゲーミングなど高負荷にも対応。 - A520
エントリーレベルチップセット。基本的な性能を提供しコストを重視。 - X470/B450
前世代のRyzen 2000 シリーズ向けチップセット。 - X399 – 高コア数CPU向けHEDTプラットフォーム。
AMDのチップセットは、Intelと同様に上位のXシリーズからエントリーのAシリーズまでラインナップがそろっている。
フォームファクタ
マザーボード選定には、フォームファクタ(形状・サイズ)も重要だ。
マザーボードには、E-ATX、ATX、mATX、ITX(Mini-ITX)の4つの主要なフォームファクターが存在する。各タイプに共通の機能がある一方で、サイズの違いによって搭載可能な拡張スロット数などに制限が生じる。
フォームファクタの選択は、使用するPCケースのサイズに依存する。E-ATXマザーボードはE-ATXケースに、ITXマザーボードはITXケースに搭載するのが一般的である。ATXが最も一般的な標準サイズであり、様々な機能と価格帯の製品が存在する。
マザーボード選定にあたっては、使用目的とケースサイズを考慮し、適切なフォームファクターを選択することが重要である。
マザーボードの機能
マザーボード選定にあたって、日常使用や複数のPCコンポーネントとの互換性を考慮し、最低限必要な仕様は確保したい。
必要な仕様はユーザーによって異なるが、ある程度の基準は設ける必要がある。マザーボード選定時の推奨最小スペックとして、適切なCPUソケット、DDR4以上のメモリスロット、PCIe x16スロット、SATA3インターフェイス、USB3.0以上のポート、Gigabit Ethernet、HDMIあるいはDisplayPortなどのディスプレイ出力、音声コーデックなどがある。
これらの基本機能を備えた上で、用途に応じて必要な拡張スロット、高速インターフェイス、オーバークロック対応などを考慮する。基本性能を確保しつつ、コストパフォーマンスも重視していこう。
BIOSとUEFI
BIOS(Basic Input/Output System)は、コンピュータシステムにとって不可欠な要素の一つである。
BIOSは、コンピュータ発展の初期から使われてきたレガシーなファームウェアだ。16ビット実行環境で、起動プロセスやハードウェアの制御を担う。
BIOSはマザーボードごとに固有のファームウェアであり、マザーボードメーカーから提供される。コンピュータの起動時に表示される画面で、インストールされたRAMやハードウェアの情報を表示する。
BIOSは、システムの基盤となるソフトウェアであり、コンピュータの起動、OSのロード、ストレージや周辺機器へのアクセス制御を行う。マザーボード上のROMチップに組み込まれ、ハードウェアに近い性質から「firm」(堅い)との語が当てられ「ファームウェア」と呼ばれる。
マザーボードに印刷されたラベルから、出荷時のBIOSバージョンを確認できる。必要に応じて、メーカーのウェブサイトから新しいBIOSにアップデートすることが推奨される。
BIOSと似たようなファームウェアにUEFIがある。
UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)は、2000年代中盤に登場した新世代のファームウェア。32/64ビット環境に対応し、グラフィカルなUIが可能。
従来のBIOSからUEFIへの移行が進んでおり、新しいマザーボードはほぼUEFIを採用している。Windows 8以降のOSではUEFIが必須。UEFIと旧BIOSの両方に対応したCMOSもある。ファームウェアの進化は、コンピュータシステムの高速化とセキュリティ強化に貢献している。