多くのPCユーザーがLinuxを避けている主な理由が、ソフトウェアのインストールが困難、という誤解にあるのではないか、とも言われている。
実際には、Linuxシステムには基本的なアプリケーションとソフトウェアがプリインストールされている上、パッケージマネージャーを使用することで、新しいソフトウェアのインストールは非常に簡単である。
パッケージマネージャーは、依存関係の解決、自動インストール、アップグレード、アンインストールなど、ソフトウェア管理のすべての面を自動的に処理する。ユーザーは面倒な手順を踏む必要がなく、スムーズなインストールが可能である。
ソフトウェアのインストールの困難さを理由にLinuxを敬遠するのはもったいない。パッケージマネージャーを使ってみると、ソフトウェアのインストールは容易であることが分かるだろう。
Google Play Store
スマートフォン上のアプリケーションストアは、Linuxのパッケージマネージャーと非常によく似た概念である。
AppleのApp StoreやGoogleのPlay Storeのように、ユーザーはアプリを手動でダウンロードやインストールすることなく、シームレスに入手できる。この仕組みは、macOSやWindowsにも取り入れられつつあり、Microsoft App Storeなどがその例である。
皮肉にも、こうしたアプリケーションストアは、Microsoftがソフトウェアシステムを統制するものである、と見なされがちだが、同時にユーザーが安全にアプリを入手するための手段でもある。
Windows上でのMicrosoft App Storeの成功は芳しいものではなかったが、理論的にはこの仕組みが望ましいことは間違いない。
Linuxのパッケージマネージャーがすでに実現していることだが、アプリケーションのインストールとアップデートを自動化し、依存関係を管理し、信頼できるソースからの入手を保証するという考え方は、他のプラットフォームにも適用できるはずである。
こうした仕組みの採用が進めば、さらに多くのユーザーにとって、Linuxを含む各プラットフォームの利用がより魅力的なものとなるだろう。
Ubuntuでソフトウェアをインストール
Ubuntuにおけるソフトウェアインストールの主要な手段は以下の通りだ。
第一に、APT(Advanced Packaging Tool)を利用する方法がある。これはUbuntuのデフォルトのパッケージマネージャーであり、Ubuntuのリポジトリから必要なパッケージを検索しインストールできる。
sudo apt install パッケージ名
第二に、Snapパッケージマネージャーを用いることができる。Snapは様々なソフトウェアを容易にインストールおよび更新できるパッケージシステムである。これはUbuntuソフトウェア Centerからインストール可能である。
sudo snap install パッケージ名
第三に、開発者が配布するソースコードのtarballからコンパイル・インストールする方法がある。
第四に、Ubuntuソフトウェアというグラフィカルなインタフェースを使い、必要なソフトウェアを視覚的に検索しインストールすることもできる。
以上がUbuntuにおける主要なソフトウェアインストール手段であるが、ユーザーの用途や好みに応じて手段を選択できる。また、ManjaroやDebianなど他のLinuxディストリビューションでも、Ubuntuソフトウェアと同等の機能を持つアプリケーションが利用可能である。
ソフトウェアセンターの中心部分
Ubuntuソフトウェアのインターフェイスは非常にシンプルだ。大きなカテゴリ別のソフトウェアリスト、インストール済みと未インストールの状態表示、ダウンロードおよびインストールの進捗確認用のボタンなどで構成される。
重要なのは、ウィンドウの右上にある検索ボックスである。これにより、ソフトウェアの名前だけでなく、説明文も検索することができ、Linuxパッケージの分かりにくい名前を考えると大変便利な機能である。
例えば、ゲームソフトを探す場合、「ゲーム」と入力するだけで、タイトルや簡単な説明、詳細な説明のいずれかに「ゲーム」が含まれるものが全て表示される。
これはごく基本的な使用例であるが、新しいメールクライアントを探すのであれば、パッケージ名を指定するよりも単純に「メール」と入力するほうがより合理的であることが分かるだろう。
ソフトウェアセンターの検索機能は、ユーザーが必要なソフトウェアを見つけ出すのに役立つ。Linux界隈でよく見られる分かりにくいパッケージ名の問題をわかりやすくしている。
Synapticパッケージマネージャ
ソフトウェアセンターの登場以前は、Synapticパッケージマネージャと呼ばれるプログラムがUbuntuでソフトウェア管理に利用されていた。このSynapticパッケージマネージャは、パッケージの検索、依存関係の解決、アップグレードなど、ソフトウェアセンターと同様の機能を備えている。
Synapticパッケージマネージャの大きなメリットは、ターミナルからのパッケージ管理を、グラフィカルなインターフェイスで操作できる点にある。これによりLinux初心者でもパッケージのインストールやアップデートがしやすくなるが、古いデザインが短所としてあげられる。
具体的なソフトウェアの検索方法は以下の通りである。
- Synapticパッケージマネージャを起動する
- 左上の「検索」タブを選択
- 検索キーワードを名前や説明文から入力
- 検索ボタンを押す
すると検索語に合致するソフトウェアのリストが表示される。リストから目的のソフトを選び、詳細情報を確認した上でインストールや削除といった操作を行える。検索ではパッケージ名や説明文、ファイル名が対象となり、ワイルドカード文字も使用可で、柔軟な検索が可能な管理ツールである。
UbuntuソフトウェアからSynapticパッケージマネージャをインストール
UbuntuソフトウェアアプリケーションからSynapticパッケージマネージャをインストールする手順は以下の通りである。
- Ubuntuソフトウェアを起動する
- 検索ボックスに「synaptic」と入力し、表示された候補の中から「Synaptic Package Manager」を選択する
- 「インストール」ボタンをクリックする
- 必要に応じて管理者パスワードの入力を求められるので、パスワードを入力する
- しばらく待ち、インストールが完了したら「閉じる」ボタンをクリックする
以上の手順で、アプリケーションメニューやダッシュボードからSynaptic パッケージマネージャが起動可能な状態となる。
Ubuntuソフトウェアを用いることで、ターミナルを使用せずに視覚的なインターフェイスでSynapticパッケージマネージャをインストールできる。この方法ならLinux初心者でも簡単にソフトウェア管理を始められるだろう。
ターミナルからSynapticパッケージマネージャをインストール
シナプティックパッケージマネージャーは、ターミナルからのインストールも非常に簡単だ。
インストールコマンドは以下の1行のみ。
sudo apt install synaptic
このコマンドは、パッケージマネージャーであるAPTを用いて、synapticパッケージそのものをインストールしている。
パスワード入力を求められた場合には、自身のユーザーパスワードを入力すればよい。
インストール後、アプリケーションメニューやダッシュボードから「Synaptic Package Manager」を検索し、起動できる状態になる。初回起動時には管理者権限確認のため再度パスワードが必要となるが、以後はグラフィカルインターフェイス上から様々なソフトウェアパッケージの管理を行えるようになる。
依存関係
Ubuntuソフトウェアや、Synapticパッケージマネージャには、パッケージ間の依存関係を自動解決する重要な機能がある。
Linuxディストリビューションでは、あるソフトウェアパッケージが動作するために必要な外部パッケージを、そのパッケージの「依存関係」と呼ぶ。大別して必須依存と推奨依存の2種類がある。
依存関係が満たされていない場合、対象のパッケージをインストールおよび実行することができない。そこでパッケージマネージャーが依存関係の自動解決を行う。つまり対象パッケージに関連する必要パッケージを同時にインストールする。
例えば、あるパッケージAをインストールしようとした際に、Aの動作に必須のパッケージBがインストールされていなければ、インストールが失敗するか、インストールできても正常に動作しない。
Ubuntuソフトウェア・Synapticパッケージマネージャはこのような場合に、不足しているパッケージBを自動で同時インストールする。依存関係の自動解決によって、ユーザーは面倒な依存関係の確認なしにスムーズなパッケージインストールが可能になる。
ソフトウェアのインストールが非常に容易で、直感的にできる。
アンインストール
Ubuntuソフトウェアからシナプティックパッケージマネージャーをアンインストール(削除)する手順は以下の通りである。
- Ubuntuソフトウェアを起動する
- 左サイドの「インストール済み」タブを選び、インストールアプリのリストから「Synaptic Package Manager」を選択する
- 右側の詳細情報画面に表示される「削除」ボタンをクリックする
- 管理者パスワード入力を求められるのでパスワードを入力し、「削除」をクリックする
- 削除完了後に表示される「このアプリを完全に削除」を選択し、関連ファイルも削除する
以上の手順で、グラフィカルなインターフェイスを通じてシナプティックパッケージマネージャーをアンインストールできる。コマンドを使用せず視覚的操作が可能なため、Linux初心者にも扱いやすい。
ターミナルからアンインストール
ターミナルからシナプティックパッケージマネージャーをアンインストールするには、以下のコマンドを実行する。
sudo apt remove synaptic
パスワード入力を求められた際には、ユーザーパスワードを入力する。削除の確認メッセージが表示されるので、”y” を入力して削除を承認する。
synaptic パッケージの削除が始まるので、完了するまで待つ。
アンインストール後、関連ファイルの削除を行うために、さらに以下のコマンドを実行する。
sudo apt autoremove
autoremove オプションが、依存関係のない不要なパッケージを自動検出して削除してくれる。
以上の手順で、シナプティックパッケージマネージャーを完全にシステムから削除できる。ターミナルのみでアンインストールが可能で、コマンド操作に慣れれば簡単な作業なのが実感できるはずだ。
不要な依存関係の削除
Linuxシステムでは不要な依存パッケージを定期的に削除しておこう。
そのメリットは以下の点にある。
- システムリソースの無駄な消費を防ぐ
- 新規パッケージインストール時の競合やトラブルを減らす
- システム複雑性の増大と管理困難化を防ぐ
主に「apt autoremove」や「apt autoclean」といったコマンドを使用することで、自動的に依存関係のない不要パッケージを削除できる。
Linuxシステムのパッケージ管理では、このような「掃除」を定期的に行うことが重要だ。不要パッケージの蓄積はシステムのパフォーマンス低下やトラブルの温床となりやすい。
粗末にせずにこまめなメンテナンスをすることが、パッケージシステムを快適に保ち、システム障害のリスクを下げることにつながる。
グラフィカルパッケージマネージャーはフロントエンド
Ubuntuソフトウェアは、グラフィカルなパッケージマネージャーで初心者にも扱いやすい。
グラフィカルパッケージマネージャーは基本的に、ターミナルベースのaptやapt-getといったコマンドのフロントエンドとしての役割を担っている。
フロントエンドとは、あるアプリケーションやシステムにおいて、ユーザーが見て操作するインターフェイス部分を指す。対して バックエンドと呼ばれるデータ処理を行う部分がサーバーサイドに存在する。
グラフィカルパッケージマネージャーは、ユーザーインターフェイスとして視覚的な操作画面を提供する一方で、バックグラウンドでaptやdpkgといったコマンドを呼び出し、実際のパッケージ管理を行っている。
したがってユーザー側からすれば、ターミナルの直接操作なしに視覚的インターフェイスでパッケージ管理が行えるが、その根幹の機能は従来のコマンドベースのパッケージマネージャーであるaptが担っていることに変わりない。GUIはあくまでフロントエンドに過ぎないといえる。
この構造はUbuntuに限らず、多くのLinuxディストリビューションで共通している。