家庭用の電源から供給される電流を、パソコン内部で使用できるように変換するのが電源ユニットの役割だ。
12Vや5Vなど、電流を供給できる形に変える必要があるので、必要不可欠なパーツだ。人体に例えると心臓である。
電源ユニットは、家庭用交流電源から供給される電力をパソコン内部の部品が使用可能な直流電力に変換する役割を担う、パソコンの心臓部と呼べるパーツだ。
CPUやGPUなどの部品には12Vや5Vといった定電圧直流が必要不可欠であり、これを安定して供給するのが電源ユニットの主要機能だ。交流から直流への変換や電圧調整を担い、パソコンを動作させる上で絶対に欠かせない。
人体の生命活動を維持する中心器官である心臓が血液循環を制御するように、電源ユニットはパソコンシステム内の「血液」である電力供給を管理し、正常動作を支えているわけだ。
パソコンの消費電力を把握して
ATX規格のミドルタワーPCケースに搭載する標準的な電源ユニットは、300Wから1000W超まで多様なワット数の製品が市販されている。
自作PCの構築に当たってはまず、採用を予定しているCPU、GPU、ストレージ等の総消費電力を算出し、その1.5~2倍の出力容量を持つ電源ユニットがおすすめだ。
特に、CPUとGPUの消費電力が大きな割合を占めることが多く、これらの余裕ある最大電力供給量の確保が重要である。
出力容量に余裕を持たせておくことで、将来のパーツ変更・追加にも対応でき、トラブルを回避できる。
必要な容量を計算する
自作PC用の電源選定に当たっては、実際に搭載する予定のCPUやGPUをはじめとするすべてのパーツの消費電力総計を算出し、その1.5~2倍の容量を持つ電源を選択するのが安全だ。
MSIが公開している電源容量計算ツールなどを利用して総消費電力を算出した上で、余裕を持った適正な容量の電源を選ぶことで、システムの安定稼働が望める。むしろ、最初から大容量を選択しておく方がトータルコスト的にもメリットが大きい。
電源容量計算ツール
https://jp.msi.com/power-supply-calculator
ATX電源
ATXは現在最も一般的なPC電源ユニットの規格である。
ATX電源は150×86×140mmという標準的な寸法を持ち、出力容量も300〜1000Wと幅広い。ATXやMicroATXフォームファクタのPCケースに搭載する際は、このATX電源を使用するのが定石である。ただし、一部ケースは奥行きに制限があるので注意が必要。
一方でSFXは、ATXよりコンパクトな電源ユニット規格である。寸法は125×63.5×100mm程度と小型化されているものの、その分出力容量が限定される。
SFX電源対応のコンパクトPCケースには、物理的にATX電源の搭載が不可能な場合が多いことにも留意したい。用途と搭載空間に応じてATXとSFXを使い分けることが大切だ。
Mini-ITXマザーボードは小型PC向けだが、一部のMini-ITXケースでは奥行きや内部空間に余裕があるものも存在する。このようなケースであれば、通常のATX電源を物理的に搭載可能な場合がある。
PCケースの対応フォームファクタと、搭載可能な電源ユニット規格は別個の基準であると理解しておこう。
ケースサイズ | 幅(mm) | 高さ(mm) | 奥行き(mm) |
---|---|---|---|
ATX | 150 | 86 | 140 |
ATX Large | 150 | 86 | 180 |
EPS | 150 | 86 | 230 |
SFX電源
SFXはATX規格の電源を小型化したコンパクト電源ユニット用の規格である。SFX電源対応のPCケースには、物理的な大きさの制限からATX電源の実装が不可能な設計のものが多い。
大きなATX電源ならSFX対応ケースでも使用可能」ということは稀で、ケース側が対応宣言している電源規格に合致した製品を選ばなければならない。
コンパクトサイズのため、SFX電源の出力容量が小さめになる、もしくは、出力容量を大きくしようとするとATX規格以上に価格が高くなることにも注意だ。
ケースサイズ | 幅(mm) | 高さ(mm) | 奥行き(mm) |
---|---|---|---|
SFX(A) | 100 | 50 | 125 |
SFX(B) | 100 | 63.5 | 125 |
SFX(C) | 125 | 63.5 | 100 |
SFX(D) | 100 | 63.5 | 125 |
SFX(L) | 125 | 63.5 | 130 |
80plus認証
電源ユニットに供給された入力電力を、どの程度効率良くパソコン内部に送ることができるかを表す指標に80PLUS認証がある。
80PLUS認証には効率水準に応じてBronze・Silver・Gold・Platinum・Titaniumのランクがあり、上位ランクほど交流入力電力から直流出力への変換ロスが少なく、エネルギー効率に優れている。
一般に、上位の認証を取得した電源ほど製造コストや市場価格が高くなる傾向にあるが、エネルギーロスの低減に加え、システムへの熱発生抑制などのメリットも大きい。
自作PC用途には80PLUS Bronze以上の認証電源を、長時間稼働するサーバー用では80PLUS Silver以上を推奨したい。用途とコストパフォーマンスを考慮しつつ選定していきたい。
ケーブルの接続方式
電源ユニットから内部機器への電源ケーブル接続方式には、固定式とセミモジュラー式(部分モジュラー式)、フルモジュラー式の3種類がある。
固定式は、ケーブルがユニット側に取り外せないように取り付けられており、不要なケーブルも付属したままとなる。
これに対してセミモジュラー式は、PCIe、CPU、マザーボード電源等の必須ケーブルのみが外せないように固定され、その他のHDDや周辺機器向けケーブルは着脱可能な構造となっている。セミモジュラー電源なら不要ケーブルを外しておくことで、PC内部のケーブル配線をすっきりできる。
フルモジュラー式は、PCIe、CPU、マザーボード電源など必須の主要ケーブルを除き、全てのケーブルを自由に取り外し可能な構造となっている。HDDや周辺機器への電源ラインも全て着脱できるため、使用しないケーブルを全て取り外せば非常にクリーンな内部配線を実現できる。
不要なケーブルの削減は、エアフローや作業性の観点からも大きなメリットがある。